NO.59
黄勇太
(人生をかけて研究に捧ぐ)
「しんどいけど楽しい。この「けど」の部分が大事なんです。」

理学部物理学科で研究に明け暮れる大学生活。彼にとって勉強とは何なのか。研究の原点にある幼少期を語っていただいた。
Presented by Chizuru Oka
Photo by Chizuru Oka
死後の世界って一度は考えたことありません?
― まず、ヨンテさんは理学部の物理学科で勉強されているんですよね。
はい、そうです。理学部って言っても学科は物理、化学、生物、数学、地球惑星ってありますよね。その中で物理は、読んで字のごとく「物の理屈を調べる学問」なんです。つまり、物が飛んできて落ちる時のその軌跡をたどったり、単純になぜこんなことが起きるのかという、事象の原因をつきとめたりするのが物理。かっこよく言ったら、「この世の真理を探してる学問」なんです。
― ではなぜ、物理学に興味を持ったのですか?
生命は解析可能なのか?ということを”この世の基本原理を描写する”物理をツールとして研究したいと思ったからかな。こう考えたのは子どものときに死後の世界を考えたのがきっかけなんですやけど。僕はもともと「意識学」に興味があったんです。意識学というのは単純に、意識とは何かということを追及する学問ですね。死後の世界とか人生で一度は考えたことありませんか?死後になんの期待も偏見もなかったら「死後の世界=無」が一般的な発想ですよね。そして本当に無になってしまうんだったら、すごく怖いなと思って。この恐怖心から、死後の世界に興味を持っているんです。そもそも死後の世界のことがわかるのかどうかすら、わからないんですけどね。それが難しいんだけど、その分野に興味があるので今は物理をやっています。将来的には、こういった生命物理学という分野を研究できる大学院に行きたいと思い、探しているところです。
― 生命物理学……あまり聞いたことがありませんね!詳しく教えてください。
生命物理学とは、生命の根源を理解しようと努める学問です。僕たち生命体は、非生命体と同じく原子や分子の集合体ですよね。ではなぜ、非生命体にはない意識を持つのでしょうか?そのような根本的な疑問を追求するんです。そのために、生命を構成するもの、つまり細胞やたんぱく質、DNAや生体高分子がどのような性質を持っているのか?ということを研究しています。こんなこと言うと哲学っぽいと思われがちですが、きちんと科学的な視点から生命を解明しようとしていますよ(笑)医療の発展が目まぐるしい現代、もう既にこのような学問は分かっていることが多いのではないか?と思われるかもしれませんが、まだまだ分かっていることは少ない研究分野です。
― 生命を構成するものの性質ですか。
そうです。例えばの話をしましょう。生命を構成してるのは細胞で、細胞を構成しているのは生体高分子であるタンパク質なんですね。それではもし、生体高分子を人工的に生命と同じように並べることが可能やったとして、生命的な動きをするのかどうか。全く同じ分子構造をしているのに、人工でつくった生命と生命から生まれた生命で、仮に行動が多少違ったとするでしょう。すると、それってつまり生命には分子構造以上の神秘性があるということになる。って、これは仮定の話なんやけど、こういうようなことをしたいんです!
― なるほど!でもそれが死後の世界の研究につながるんですか?
死後の世界ってアプローチの仕方が難しいんです。どう考えて研究するべきか、ということからわからないんですよね。でも、まずは生命のことを解き明かしていくことだと思っています。ただ、そのアプローチ方法は様々なんですね。だから、僕は生命物理学的なアプローチで研究していきたい。その一方で、脳科学等で最近よく議論されている人工知能的な情報学の発想から生命の原理を考える方法もあるだろうし、その他にもいろいろな方法で生命の起源について調べたり、生命の神秘性について調べたりもできます。だから、研究したいこと自体はあんまり物理っぽくないと感じるかもしれないけど、その問題に対して物理というアプローチ方法で研究しようと思っているって感じかな。でも、やっぱり死後の世界がどうなっているか研究するのは、とても難しくて。自分が生きている間にはこの問題は解決するとは思っていません。遠い未来に解決するとしたら、僕の研究がそのうちの一歩にでもなれたらなと思っています。
苦痛より一瞬感じる楽しさが優ってる
― とても難しい分野なんですね。では現在はどんな研究をされているんですか?
実は生命にはぜんぜん関係ないんです(笑)今研究しているのは、「原子が電磁波とどんな相互作用をするか」。これこそめっちゃ物理でしょう(笑)だから今やってることはぜんぜん違うんやけど、それを全て基礎として、将来大学院に進もうと思っています。
― 今は研究で忙しいんですか?
朝から晩まで空いている時間はずっと勉強していますね。ずっと集中してるわけじゃないけど、研究室には一日中います。僕、よく勉強する人と思われているんやけど、勉強すること自体が好きなのではなく、勉強は道具であり基礎であり、研究する上で必要なものだからやっているわけで、勉強を楽しんでるわけじゃないんです(笑)必要やからやってるし、やらなければならない。僕の研究に終わりはまだまだないんですよね。
― そうは言っても、そんなに勉強できるのってすごいですね!
常にしんどさは感じています。でも、苦痛より一瞬感じる楽しさが優っているんです。しんどいけど、できたときの達成感のほうが大きい。もちろん、研究のゴールはまだまだ先なんやけど、頑張ってることが時々試験で結果に表れたり、友達と議論を交わしたりすることが今僕にとっての楽しさですね。しんどいけど楽しい。この「けど」の部分が大事なんです。しんどいだけではおもしろくない。でも、しんどくない楽しさは単なる楽しさ”funny”で、しんどい楽しさは”exciting”なんですよね(笑)それがあるから頑張れます。
― なるほど!では最後に神大生にメッセージをお願いします。
精力的に動くことは大切だと思っています。でもそれは皆勉強を必死にやれ!という意味ではありません。その人にとって必ずしも勉強が大切なわけじゃないから。勉強も所詮ツールじゃないですか。僕には勉強が必要なツールだったわけで今こうして勉強しています。でも、それは人それぞれやからどこの分野でもいいと思うんですよ、スポーツとかボランティア活動とか、ましてや遊びでも大丈夫。もちろんやりたいことを見つけるのは難しいですよね。でもだからこそ見つからんときは見つかったときのために基礎力を高めておいたらいいと思うな。あらかじめいろんなことをまんべんなく浅く広くやっておいたら、いざやりたいことが見つかった時にチャンスが増えますよね。つまり、やりたいことがある人もない人も、やるべきことはあるはずなんです。それを精力的に必死にやっていかないと!って思うんです。だから、遊びでもいい、なにかしらを極めるためにもっと精力的に活動したらいいと思います!
20. 中村 匡秀
工学部准教授
27. 吉原 史郎
経営学部卒コンサルタント
75. 中村 嘉孝(なかむら よしたか)
神戸大学法学部4回
22. 吉備 友理恵
関西建築サークル#代表
24. 洲崎 敏伸
理学部准教授