写真担当Araiさん(以下:A)、イラスト担当sakoさん(以下:s)
KooBee本誌に掲載できなかったインタビューの全貌をWeeBee特別公開!!
写真×イラスト。唯一無二の作品を届ける、その裏側にある想いとは。
仲良しな二人の温度感が伝わるインタビューの様子をぜひご一読ください!
PROFILE
sara
アーティストとしての序章、バズを経て広がった世界。
-SNSで投稿を始めたきっかけを教えてください。
s:一番初めに私たち二人の作品を載せたのはTwitter(現X)です。初めて投稿したきっかけは本当に些細なことで、バズろうとか、みんなに見てもらおうという感じではなく、コロナの時期で二人とも暇で外にも出れず。Araiさんが元々撮っていた写真を見せてもらったときに、イラストを描いてみたいなと思い落書きしたら、Araiさんがすごく気に入ってくれて。
A:SNSに載せたら30万くらいいいねがもらえてすごく嬉しかったよね。
s:それをきっかけにいろんな作品を作るようになって、他のSNSとかにも載せるようになったという感じです。
-落書きをしてみたくなったきっかけは何ですか。
s:初めに落書きした作品が、『線香花火』という作品なんですけど。
Araiさんに夕日の写真を見せてもらったときに、これに白線で絵を描いたらいいのができそうって直感的に思っちゃった。そのときは線香花火を描くとか、そういうのも全然考えてはなかったんですけど、イラストを描いてみたいって思ったのがきっかけです。それまでは写真にイラストを描くことは全然やったことがなかったし、高校生の時にクラスTシャツの絵を描いたりする、「クラスにいるちょっとだけ絵ができる子」みたいな感じでした。
-SNSで初めて作品がバズったときは、どういうお気持ちでしたか。
A:まず、落書きを見せてもらったときに、正直バズるなと思いました。投稿したら案の定バズったんですけど、想像以上の反響だったので、「予想通りバズった」という気持ちが2割、驚きが8割でした。
s:あんまり実感なかった。
A:実感なかった。
s:『線香花火』をいろんな人に見てもらってから少し経った後に、作品のことを知人に伝えたら、「知ってる」と言ってもらえたり、初対面の方からも反応があったりして、すごくたくさんの人に届いたんだなと初めて実感できました。数字が増えている期間は、あまり実感がなかったような気がします。
A:バズをきっかけに時々作品を投稿していましたが、社会人になってからは、仕事が忙しすぎて何もできていない時期がありました。
s:でも、1年くらい経ってから、仕事が忙しすぎて忘れていたけど、作品作りをやらなきゃって。
A:うん。社会人になると、働く目的、生きている目的が分からなくなる。ちょっとやめよう、大学生にこういうこと言うのよくないな(笑) だからこそ、「楽しかったことをやろう」と二人で本格的に活動を始めました。
ワクワクを形にするワクワク。作品を届けるためのアイディアにもたくさんの魅力があった。
-活動において、お二人がワクワクする瞬間はいつですか。
s:どんな落書きをするかひらめいた瞬間。特に自信作というか、すごく好きな作品がいくつかあるんですけど、それを思いついた時に早く描きたいと思った。写真がまだないときは、撮ってくれるまでの間とか、そういう瞬間がワクワクします。
A:自分はやっぱり写真を撮りに行くとき。僕たちは早朝の写真を撮ることが多くて、夜中に眠い中で運転していくわけで、結構きついんです。
s:山登りとかも。
A:でも、綺麗な景色を見たときや、これきっといい作品になるだろうなというワクワク感はすごく好きですね。そういった瞬間に、アドレナリンがすごく出てます。
-早朝に写真を撮られることが多いとおっしゃっていましたが、その理由は何かありますか。
A:私たちは早朝と夕方に撮ることが多いんです。 空に落書きをすることが多いんですね。 太陽の向きにもよるんですけど、真昼間だと太陽が一番上に上がっていてすごく明るいので、白い写真になっちゃうんです。そうすると、白線で絵を描いたときに、絵が目立たなくなっちゃうんですよ。空の色が綺麗に出ている時間帯に撮るために、早朝に撮っています。
-写真に対して落書きのアイデアが先行することはありますか。
s:あります(即答)
A:すごい食いつきで言ってくるね(笑)
s:写真がない段階で、例えば「花火を花束にしたらいいんじゃないか」というアイデアが浮かんで、「花火の写真撮って」と言うことも最近は多いかな。
A:はい。逆に何も考えずに撮って、いい感じの写真を渡して描いてもらうことも多々あります。
-既にある写真に落書きするときは、どのような基準で写真を選んでいますか。
s:Araiさんが好きな写真を送ってと言っています。落書きのしやすさや、色味的なものもあると思うんですけど、今まで作品を描いてきた経験の中で、やっぱりAraiさんが上手く撮れた、色味が綺麗に出たと感じる写真が、私の中でもすごく描きやすい気がしています。
-どのような瞬間を作品にしたいと感じますか。
A:結論から言ったら、どういう瞬間かはちょっとわからない。というのも、いろんな土地の綺麗な景色を撮りに行く中で自分がすごく大事にしているのが、その場所で目的の写真を撮る過程で撮れる何気ない一枚。その一枚に出会いたいといつも思っています。その偶然性に僕は出会いたいと思っていて。作品にしたいと思う瞬間は、それに出会った瞬間ですかね。
s:私たちは空や山など自然を撮ることが多いのですが、なんていうかな、現実とは思えないけど、現実の景色のような。
A:夢だけど、夢じゃなかった。みたいな。
s:そう。そういう景色に出会うことがあって、そんなときにこれを作品にしたらいいのができそうと思うかも。
-sakoさんの落書きのアイデアは、どういうふうに思いつくことが多いですか。
s:私の場合は、結構直感型です。雲を見て、 あの上に猫ちゃんが乗っていそうとか、雲の形が何かに似ているとか、そういう感じで思いつくことが多いです。他だと、例えば『口実』という作品は直観というより、花火の花言葉が「口実」と知って、そこから連想して花火を花束に見立てていて。誰かを誘う口実に花束を渡すのと、花火を見るというのを描くという感じで、言葉から連想することも結構あります。
-投稿文や流している音楽も魅力的ですが、その点に関してこだわりはありますか。
s:やっぱり見ている人に、共感というか、もっとその作品の裏を知ってほしいと思っていて。『口実』なら、花火の花言葉には口実っていう意味があるんだよという感じで、知ってほしいなっていうものがあって、最近は結構それを全面的に出してます。その場所に行って写真を撮ったときに、頭の中で結構映像や音楽が流れることがあって、投稿にはその音楽を入れていることが多いです。音楽が好きで、自分の頭の中の引き出しから音楽を流しながら絵を描いていることも多いので、そこから選んでいることもあります。
日常の中にある物語や景色に気づいてほしい、唯一無二の作品に込めた想いが届きますように。
-作品を通じて伝えたいメッセージはありますか。
A:作品ごとに違ったりはするんですけど。『口実』だったら花火の花言葉の「口実」にかけて、「誰か誘ってみない? 」とか。
s:『月が綺麗ですね』という作品は、夏目漱石の「月が綺麗ですね」はこの月を見て思い浮かんだのかなという背景があったり。「月が綺麗ですね」が「アイラブユー」って意味だという知識はあるけど、実際、それが腑に落ちたことはなかった。でも私はこの作品を見て、そういうことなのかなって、ちょっと腑に落ちた気がして。そういったものをみんなにも感じてほしい。
A:そうですね。だから、作品ごとに伝えたいメッセージが違いますね。
s:例えば都心から離れた県の人は、田舎だからなにもないなとか、都心ではビルばかりで面白くないなと思う人がいたりとか。でも、実は日常の風景や見上げた空、その地域のちょっとした撮影スポットで何か物語が生まれたり、アイデアのきっかけがあったり、すごく綺麗な景色があるんだよってということを伝えられたらいいなと思っています。
A:そのベースがあった上で、「特にこの作品は何を伝えたいか」というのが派生していく感じです。
-メッセージを伝えるために、見る人を惹きつける工夫や、意識していることはありますか。
s:それこそ音楽だと私は思っていて。歌詞を聞きながら、その作品を見ると、結構リンクしている部分があって、 作品を描いている情景や作品についてもっと知れたり、見てくれる人の経験と私たちの作品がリンクしたりすることに繋がったらいいなと思って、音楽は結構頑張って考えています。
A:あとは、写真に白線で落書きするという時点で、人を惹きつけるという部分はクリア出来ているのかなと個人的には思っています。 むしろ、人に見てもらうために、他の方々の作品と区別するために写真に落書きしたというところもあります。
-いろんなSNSで活動されていると思うのですが、それぞれのSNSで差別化している部分はありますか。
s:確かに結構あるかな。今やっているSNSがX、Instagram、TikTok、あとYouTubeと、一応LINEVOOMをやっているんですけど、
A:Threads、Blueskyも。
s:例えばXだと、作品単体で音源がつけられなかったりするし、 TikTokとかInstagramだと、リール、縦動画だったりとか、色々コンテンツが違うので、分けている部分ももちろんあります。 それぞれのトレンドもあるから、そういうのを取り入れる場合もありますし、 キャプションなどで、SNSの年齢層に合わせて、どうしたら共感してもらえるか、作品を見た時にどう自分の経験に結びつけてもらえるかなどを考えながら添える文章を工夫しています。
A:すごく細かいところでいうと、実はTikTokと InstagramとTwitter(現X)のアカウント名がちょっと違ったりとか。ぱっと見た時にすごく印象に残ってもらえるような。結構TikTokは流れちゃいがちなので、より目立つようにアカウント名も工夫していたりとか、差別化したりしています。
写真×イラスト。互いへのリスペクトを忘れない二人が生み出す作品は人々の心に残り続ける。
-フォロワーさんからのコメントで嬉しかったものや印象に残ってるものはありますか。
s:去年の大晦日に、 星空の写真の上に龍とウサギがいて、卯年から辰年に変わるっていう作品を作ったんです。撮影場所は千葉県の星空が見えるところなんですけど、 今年の初めぐらいの地震でちょっと崩れちゃって、作品通りの風景が見れなくなってしまったんです。私が、そのことについてショックだな、残念だなとSNSで言ったときに、フォロワーさんから、「実際に見られる景色はなくなってしまったけど、二人が作品に残してくれることで、ずっと私たちの心に残り続けるし、 二人のおかげで元の場所の風景をずっと覚えている」と言ってもらえたのが印象的ですごく嬉しかったです。
-お二人の一番のお気に入りの作品は何ですか。
A:これは先に答えて。
s:難しい難しい難しい。でも、ずっと言っているのは、一番初めに書いた『線香花火』が思い出深いのもあるし。夕日に線香花火を描くというアイデアが・・・。
-すごいです。
s:恥ずかしいけど。
A:恥ずかしいね(笑)
s:これ以上のアイデアを思いつくのかなとずっと思いながらやっているというのがあって、そういう意味で『線香花火』かなと思います。
A:Araiは最近の作品で、『月が綺麗ですね』というのが好きです。でもやっぱり一番最初に作った『線香花火』が30万いいねくらいの反響があって、それを超える作品を最初の1、2年は作れませんでした。
s:いいね数的には超えてたものもあったかもしれませんが、自分たちの手応え、納得感的に。
A:ちゃんと毎年その年を代表する作品も作れてはいて、かなり反響があった作品もあったんですけど、やっぱり『線香花火』を超えられてないなという感じはありました。でも『月が綺麗ですね』は、言葉なども含めて、自信を持って「私たちの代表作です。私たちはこういうのを作り続けているんです」と言える作品になったと思います。アイデアとして月を指輪に見立てて落書きしてみたらっていうのは持っていたんですけど、sakoがそこを上手く(夏目漱石の)「月が綺麗ですね」の言葉とうまく絡めてくれて。
s:2人で作ったって感じ。
A:ありますね。そういったのも含めてお気に入りです。