六甲台キャンパスから歩いて3分。隠れ家のような落ち着いた雰囲気のカフェ「ink BOOKS and COFFEE」。その店内をイチからデザインし、現在も運営方針を提案し続けるのは2人の神大生である。二人がこのカフェにかける情熱とは。
PROFILE
宮崎信/山岡義大
お店の細部までこだわり抜く。
-まずは、このお店について教えてください。
「ink BOOKS and COFFEE」は、去年の秋ごろにオープンしたカフェです。4年前に王子公園で別のカフェの内装を手伝わせてもらったことがありました。去年の5月ごろ、その王子公園のカフェのオーナーにまた声をかけていただき、廃墟のような状態の家を壁を塗りなおすことから始まり、デザイン、設計、家具集めなどすべて自分たちで行いました。「ink」という店名は万年筆のインクからとっていて、本を読んだお客さんのコメントやお店に来た感想を、店内に設置したノートに書いてもらいたい、という想いがあります。また、店の近くには大学があるので、教養のある人たちが落ち着いて本を読める空間を目指して設計しました。
-落ち着いた空間を作るためにどのような工夫をしていますか?
一番のこだわりは、個室のような小さな空間と大きなテーブルを置いた広い空間を区切る大きな本棚です。もともとオーナーの意向の中に大きい本棚を設置したいというものがあり、最初は壁にぴったりとくっつけて設置しようとしていたんです。でも、試行錯誤を繰り返していくうちに個室を作るというアイデアと合わさって、本棚で個室スペースを区切るという形になりました。本棚の隙間のおかげで閉塞感もなくなり、利用してくださる方にとっても過ごしやすい空間になったと思います。他にも、照明や家具、食器ひとつひとつを様々なお店で探して、店内の雰囲気に合うものを選んだり、お客さんの席から配管や配線が見えないようにしたりして、アンティークな空間で本を読めるように工夫しています。あとは、天井が高くてガランとした感じがしたので、本物の木のオブジェを用いて温かみを感じられるようにしています。こういった発想はオーナーにも褒めていただきました。
-置いてある本もご自分たちで買いに行かれたんですか?
色々ですね。古本屋で買ったり、オーナーが知り合いから集めたり、お店に来たお客さんが寄付してくださった本もあります。ジャンルも様々で、難しい美術の本から小説、雑誌まで色々置いてあります。本だけではなくレコードも置いていて、お客さんの要望があれば奥にあるレコードプレーヤーで好きな曲をかけることもできます。あとは、プロジェクター、Wi-Fi、コンセントも完備しているので、ミーティングやスポーツ観戦に使っていただいてもいいんじゃないかなと思います。
-お店を設計、運営していく中で苦労したことはなんですか?
デザインの段階では、オーナーの意見と自分たちがしたいことをすり合わせるのは大変でした。お互いが納得できるまで何度も打ち合わせをして、設計図だけではなく3Dの図面や、実際に人が入るとどうなるかというシミュレーションを見せたりしました。こういったところで大学で学んでいる技術的なことがとても役に立ちましたね。あとは、配管を業者に依頼する際に、僕達のこだわりを通すのが大変でした。配管の通し方は授業で教わっていなかったので、実際に建物を建てるということを経験したことがないという点で業者の人と認識が乖離していていたんです。しかしそういった困難の中でも自分達のこだわりは極力崩さないようにしていました。 運営していく中では、広報が今も課題ですね。あまりこのお店が神大生に知られていないと思うんです。割引もいろいろありますし、落ち着いてレポートを書きたいときや空きコマをゆっくり過ごしたいときにぜひ来てほしいですね。
-お二人とも院生ということですが、ご卒業後もこのお店を続けていかれるんですか?
僕たちは別のところに就職します。そこでも設計の仕事はやっていくので、ここで培ったノウハウを活かしていきたいですね。僕たちは卒業するのでこのお店は後輩たちに任せることになります。ただ、来年残るスタッフが4人しかいないので心配ですね(笑)。神大生がここを訪れて、アルバイトをしたいと思ってくれれば嬉しいです(笑)。
-では最後に、神大生に一言お願いします。
山岡:僕たちがこのお店を作るとき、遊び心を忘れないように楽しくやっていました。その中で、大学で学んだ知識を活かしたり、社会でしか学べないことに取り組めたことがすごく経験になりました。だから神大生の皆さんにも、遊びと自分が学んでいることを結び付ける機会を見つけてほしいなと思います。
宮崎:デザインをもっと身近に感じてほしいですね。良いデザインを作るためには、お金がかかるんじゃないか、難しい知識が必要なんじゃないかと思っている人もいると思うのですが、そうじゃない。限られた予算や条件の中で、いろいろ試したり工夫したりすることで一味違うモノを作れるんだ、ということを伝えたいです。
山岡・宮崎:あとは、神大生に是非是非このお店に来ていただきたいですね。
-編集後記
実際のカフェでのインタビューにあたり、天井に飾ってある本物の木や、クリスマスツリーにみたてて置いてある本のオブジェクトなど、各所に凝らされた工夫にとても感心しました。
いただいた珈琲もとてもおいしく、今後個人的に利用したいと思いました。
-「ink BOOKS and COFFEE」について、もっと詳しく知りたい方はインスタグラムもチェックしてみてください!
instagram:@ink_booksandcoffee