KooBee本誌に掲載できなかったインタビューの全貌をWeeBee特別公開!!
tofubeatsさんの貴重なお話を前編、中編、後編に分けてお届けします。
【前編】tofubeats×音楽×神戸、そのルーツを辿る。
音楽を通して分かった「思っているルートだけが人生じゃない」
PROFILE
tofubeats
-糸川:まず最初に、お仕事や音楽関係についてお聞きしたいです。音楽の道を志したきっかけは何だったのでしょうか。
tofubeats:元々ベタに音楽が好きで、中学生のときにベースを始めました。ベースって1人でやっても楽しくない楽器なんです、楽しい人もいると思うんですけど。友達は既にバンドを組んでしまっていて1人でベースをやってもなってことで、始めて1週間でベースを人にあげちゃったんですよ。そうしたら親に「わざわざ買ってあげたのに何をやっている、お前には一生楽器を買ってやらん。」って怒られまして。それで俺は聞く方で頑張っていこうと思っていたのですが、やっぱり聞いているとやりたいなっていう気持ちがもう1回湧いてきて。でも楽器はもういいかなって思っていたときにネットで、機材を使って音楽が作れるという記事を見ました。やり方の動画を見て「自分も出来るかも」と思い、また親に頼んで買ってもらったのが始まりです。当初は仕事になるとは全然思ってなくて、ずっと趣味でやっていた感じですね。いろいろな人に聞いてもらいたくてイベントに出たり、人に曲を渡したりしているうちにどんどんお金をいただけるようになっていって、気がついたらプロになっていました。
-糸川:学生時代に好きだったアーティストさんはいらっしゃいますか。
tofubeats:大学生のときは、テイ・トウワさんとか電気グルーヴとか日本のベテランDJみたいな人が好きで、そういう人たちみたいになりたいなっていうのはすごく思っていましたね。
-糸川:音楽以外にも影響を受けた方、例えば小説家の方などはいらっしゃいますか。
tofubeats:僕は小説を全然読まなくて、大学生の頃から新書とか経済書、あとは人文、哲学とかの本しか読まないんです。仲の良かった神大の先輩が経営学部だったので、経済の本をよく教えてもらっていました。その影響で自分も経済学部に入ったというのはあったんですけど、小説を読んでいて、この人からすごく影響を受けたということはあんまりないです。好きな作家はいますが、音楽にすごく影響があるというよりかは単純に人として面白いなぐらいの感じかもしれないですね。
-糸川:神大生との繋がりもあったんですね。大学生時代、六甲に住んでいたとのことですが、tofubeatsさんにとって「神戸」とはどんな街ですか。思い出やエピソードがあれば教えてください。
tofubeats:「水星」を一緒に作ったオノマトペ大臣さんと、「北極百貨店のコンシェルジュさん」という映画の原作者で漫画家の西村ツチカさんのお2人が、僕が高校生の頃に神大の学生だったんです。神戸のレコード屋さんのコミュ二ティに入っていて知り合いました。それでお2人にうちの大学でDJやらへんかって誘ってもらって人生で初めて人前でDJをした場所が神戸大学なんですよ。今はもうないと思うのですが、昔オールナイトで行われていた巌夜祭という神大の文化祭でDJデビューしました。僕は当時高校生だったので夜10時までやらせてもらっていました。オールナイトの文化祭に衝撃を受けて、そこの人たちに色々音楽を教えてもらうこともあったので、神大は本当に思い出深い場所なんです。カップヌードルの自販機とか行ったなあ、すごく懐かしく思います。
-糸川:神大とそんなご縁があったなんて驚きです。音楽のお仕事の始まりについてお聞きしてきましたが、これまでこの仕事をしていて1番嬉しかったエピソードを教えてください。
tofubeats:本当にいろいろあるのですが、そもそも今続けられていていろんな人と会えているという時点で日々すごく嬉しいです。自分にとっての憧れの人や好きな芸能人に会わせてもらえる機会があるのも嬉しいですね。地元が関西で新喜劇が大好きなので、新喜劇で活躍してらっしゃる方々にお会いできたのはすごく嬉しくて思い出に残っています。皆さんからしたら僕も表に出てる人だと思うんですけど、僕らは未だにそういう大学生のときの気分が残っているので、有名人と会うと「有名人や!」って思うんですよね。
-糸川:加えて、音楽の仕事を通して得られた考え方などあればお聞かせください。
tofubeats:やっていくルートっていうのは思っているよりいっぱいあるんだっていうことを、音楽の仕事を通していろんな方から教えていただきましたね。自分は中学校から私学に行ってたんで、こんなこと言ったらあれですけど周りはお金持ちが多いような環境でした。そういう環境で凝り固まっていたときに音楽の仕事をやり始めたことで、いろんな人を知って、人生の奥深さのようなものを学びました。
神大生は公務員や企業への就職を目指す方が多いと思います。今はマシかもしれないですが、僕がやってるような仕事やベンチャーへの就職はチャレンジングに見られがちですよね。実は前に一度神大に講義をしに行ったことがあるんですよ。いわゆる大手企業への就職に限らず、趣味から始めた音楽で仕事をやっていけている人もいるよって紹介する授業に呼んでもらいまして。そのときも、皆さんやっぱり僕みたいな働き方に馴染みがなく、あまりイメージが湧かないようでした。自分の場合も中高大と関学に行っていて、大企業にいくものだと思っていましたが、1回もアルバイトをせずに音楽でごはんが食べれていて。実際、サラリーマンとして働いている人たちと比べて、僕が特別生活に苦労しているわけでもない。思っているルートだけが人生じゃないことに気がつきました。知らないだけで思わぬ形でやっていけている人ってたくさんいるんですよ。