「コミュニケーションはスポーツみたいなものなんです。」コミュニケーションで淘汰される消極的な人たちを救いたいと語る西田先生。自身も消極的でありながら日々「SHYHACK」を生み出し続ける先生にコミュニケーションについてじっくり語っていただきました。
PROFILE
西田健志
技術でコミュニケーションを救いたい
-先生は何を研究されているのですか?
私は、コミュニケーションに使うアプリやシステムを作り、そのシステムを通してコミュニケーションをとるとどういった効果が現れるかを研究しています。やっぱりコミュニケーションが苦手な人もいると思うんですよね。目が悪かったら眼鏡を使うみたいに、コミュニケーションが難しかったらそれを補う道具を使えばうまくいくのではないかと思っているので、例えば緊張してうまくしゃべれない人のような、コミュニケーションに困っている人達を助けてあげられるものを作っていきたいと思っています。
-どういった流れで今の研究にたどり着いたんですか?
もともと私は情報分野の研究をしていました。私が行っていた学会では、普通の学会とは違って、人の発表を聞きながら皆がチャットで会話しています。そのチャットには毎年違うシステムを使っているんですが、ある時そのシステムを公募することになったんです。それで応募してみたら周りのウケが良くて、それからいろんなシステムを作るようになりました。意外かもしれませんが、学会は結構シャイな人が多いので、いつも同じ人同士が喋っている感じです。だからこそ、「喋っていない人はどういうことを考えてるんだろうな」「今喋っていない人がもっと発言出来たらいいのに」という思いがあってシステムを作ろうと思いました。この頃から、情報分野そのものより、アプリやシステムを実際に使う人間の方に興味があるんだなと気づいて今の研究をするようになりました。
-学会では、先生の作ったシステムにどのような反応がありましたか?
けっこう好評で、中には「コミュニケーションで困っている私に手を差し伸べてくれるなんて!神!」みたいな感動の域に到達することもあって想像以上でした(笑)。普通、本当にコミュ障な人は自分がコミュニケーションに困っているなんて言えないと思うんですが、そういった人からも素直に反応がもらえたのは良かったですね。まあ、そもそも何かのシステムを使う時にその場に制作者本人がいることってあんまりないから、感想を直接言いたくなったのもあると思いますが、このシステムがコミュ障の人がコミュ障だと言える安心感を与えられたのかなとも思います。こういうのが広がればいいですね。例えば僕が欅坂46オタクを公言しているのも、せめて神戸大学はオタクに寛容であってほしい、好きなことを自由に好きといえる場所であってほしいという思いもあるからなので、そういう安心感がもっと広がったらいいなと思います。
-でもやっぱり、コミュ力のある人の方が優勢ですよね...。
本当にコミュ力がある人っていうのは、コミュニケーションが苦手な人も含めたどんな相手ともうまく話して相手の言いたいことを聞き出せる人とか、みんながうまく話せるように司会ができる人のことだと思うんです。コミュニケーションが苦手な人との会話は面倒だし効率が悪いと考えて、自分たちだけでワイワイやることを良しとする仲間外れのコミュ力は本当のコミュ力ではないと思います。 実際、コミュニケーションが苦手な人と会話するのは大変かもしれません。けどだからこそ、コミュニケーションってゆとりが必要なんです。心にも時間にも。例えば足が不自由な人や妊婦さんには席を譲りましょうみたいに、特定の人には優しくしようっていうのがありますけど、本当はみんなに優しくあるのが一番いいんですよね。でも今は往々にしてみんな忙しすぎてそういう優しさが足りなくなりがちなんです。
-みんなに優しくってなかなか難しいですね…。
何の得もないのに良い子でいることはすごく高尚だけど、難しいですよね。だから本当に全員に優しい社会を実現するには、みんな優しくしましょうね、みたいな道徳的なやり方よりも、優しい方が得をするっていう身も蓋もないような仕組みを作らないと難しいと思います。良い子にしてると良いことがあるということがわかると、みんな急速に良い子になるっていう結果も今出つつあって(笑)。そういう部分では情報技術がもっと活躍できる余地があると思いますね。