NO.80
稲葉滉星
(神戸大学持続的災害支援プロジェクトKonti代表)
「自分たちに出来るのは、人に寄り添うこと」

ボランティア、震災、熊本。ほとんどの人が、それらと関係せず生きているでしょう。彼が活動で大事にすること、体験したこと、気づいたこと。彼のような人を、どこか遠くに感じているあなたにこそ、知ってほしいことがあります。
Presented by Saki Watarai, Honoka Kuwahara
Photo by Hiroko Ohnishi
人と人として、向き合いたい。
― 代表をつとめる稲葉さんは、東日本大震災のボランティアもされていましたが、熊本との関係はほとんどなかったそうです。
他のボランティア団体もあるなか、ご自身で団体を立ち上げた経緯を教えて下さい。
最初は、東北の支援をしていながらも熊本のことは他人事だったんです。この活動を始めたのは、被災地出身の知り合いの影響が大きいです。知らない土地の人が「友達の友達」にまで近づいたことで初めて、熊本に興味を持ちました。彼女を見ていて、地元出身者は現地にいる知り合いのことが不安だろうし、何かしたいと思っているだろう、と感じたんです。また、ゴールデンウィークに個人で現地に行った際にまだやれることがあると実感したこともあり、九州出身の人に呼びかけて団体をつくることに至りました。神大生が動きたい時にすぐ動ける形をとりたいと思ったので、他の団体に参加することは考えなかったですね。
― これまでに団体として3度派遣に行かれていますが、現地ではどのような活動をなさいましたか。
一回目の派遣は何も持たずに飛び込んで、地元広報誌を配布するお手伝いをしました。各家庭を回る際に、住民の方とお話しする機会も多くありました。田舎って、隣の人に話すと村中に筒抜けみたいなところがあるからか、外から来ただけの僕らには気軽に話せることも多いようで。最初は「こんなことがあってな…」と現状を教えてもらうところから、だんだん愚痴や不安をこぼしてくれるようになりました。
二回目は農業のお手伝いをしたんですが、正直なところ、初めは気が進まなかったんですよ。農業の人手不足は全国にあるのに、なぜ、わざわざ被災地で手伝いをしてるんだろうって。でも、僕らが開くイベントなどに農作業が忙しくて参加できずなかなか関わりを持てない方と、会話する機会にもなっていると気づいたんです。このように現地の方とコミュニケーションの取れる活動は三回目でも引き続き行い、人と人として向き合うことを心掛けています。被災地でボランティアするとなると、して”あげる”という形になりやすいのが嫌だと思っていて。”してあげる”だけじゃなくて、例えば農家の方に野菜をいただくみたいに、”してもらう”ことも大切に、対等な関係をつくっていきたいですね。
― 現地では仮設住宅での足湯や演奏会など、様々な活動をされていますが、どのように内容を決めているのでしょうか。
先ほどのお話しから、心のケアに注目しているように感じたのですが。
仮設住宅ではお隣が全く知らない人になることもあり、新しく近所付合いを始めなければなりません。僕らの活動は、そんな課題へのアプローチのひとつです。例えば足湯に集まることでお隣同士を知る、コミュニティができる、自立的にコミュニティ活動が興るという新しい流れを作っています。また演奏会では、仮設住宅に知り合いのいなかったおばあちゃんが、演奏を聴きながら隣に座った人と話すなど、新たな交流の場になっています。活動をきっかけに、僕らが去った後もコミュニティはちょっとずつできていくかもしれない、そんなことを思いながら活動内容は自分たちで考えています。けれども活動に対する反応は人それぞれ。出来ないことは当然あるし、限られていることばかりです。しかしその中で、自分たちに出来ることを、少しずつやっていこうと思っています。
団体の理念として「個人に寄り添う」ことを大事にしているのですが、学生ができることってそのくらいだと思うんです。人それぞれの寄り添い方があると思いますが、僕はそこにいた人が心地良いかということを一番大事にしていますね。まちの状態は回復する一方ですが、メンタル面では、悪くなる人・良くなる人とで分かれます。どの人にもちゃんと目を向け、寄り添っていきたいですね。
僕がボランティアをやる理由は。
― 今回の派遣で良かったこととして、「ボランティアの参加者全員が、楽しいと言っていたこと」を挙げられました。
正直、「楽しい」というのは不謹慎に感じてしまうのですが、どう思われていますか。
「ボランティア楽しいってどうなん?」って結構言われるんですけど、楽しくないことって続かないじゃん、と思うんです。現地でひどい対応の人に会ったり、できないことがあってモヤモヤしたり、ハプニングやつらいこともたくさんあるんですが、それでも楽しかったって言えたらベストですね。それぞれが行って良かったと思えることを、なんでもいいので見つけて、全部ひっくるめて楽しかったと言えるといいなって。
― 団体名にもある「持続的」をキーワードに活動されていますが、長く活動することとは、意味合いが違うそうですね。
まず、僕らが一日二日行ってすぐに助けられる、というのは期待してないです。最終的な目的は、向こうの地域がどれだけ持続的に発展するかということです。活動に参加したことをきっかけに、旅行で再度訪れてお金を使ったり、熊本に関わる仕事に就いたり。僕たちの世代が熊本を盛り上げていくスタイルをつくりたいですね。だからこそ、参加者に熊本を好きになってもらうのが一番大切だと思います。三回目の派遣では、熊本県立大学の学生との意見交換会を行ったのですが、これには、今後個人でも行きやすくするため、という目的が裏にあるんです。現地に友達がいたら1日だけでも一緒に活動できる、そのための仲良くなるきっかけに、と考えて計画しました。
― 「おしゃれな建物を建てるために建築学科に入ったはずだった」と、稲葉さん。
ボランティアの経験を通して、将来やりたいことに影響があったようです。
そもそも僕の活動には、まちがどうなっていくのかという興味が根底にあって。まちをつくっている要素としての人が元気じゃなきゃ、まちは元気にならない。せっかくのいい場所も今は疲れてしまっています。一方、今まで知られていなかった小さな村に注目が集まっているのが震災によるものというのも事実です。災害が起きた今重要なのは、いかに良い方に活かせるか、だと思います。
復興が進み、仮設住宅から復興住宅に引っ越すと、お隣がまた変わってしまうのもあって、余計外に出なくなる。悲しいことに、自殺や孤独死が多くなるらしいんです。外に楽しい場所があったらそんなことも起こらないのに、と思って公園をつくりたいと考えたりしました。ただ、もっといろんなところに気になる問題があって、今は結局、まちづくりみたいなことをしたいと思っています。
― 最後に、神大生に向けてひとことお願いします。
ボランティアに参加してほしい、と言う気は全くありません。僕が伝えたいのは、友達や好きな人、自分の大切な人を守る術を持っててほしい、ということです。友達の友達を守りたい、それこそが僕がボランティアをやっている理由です。誰かが亡くなるのって、特に知り合いが亡くなるのって嫌なことだというのを東北の被災地で目の当たりにしました。その時に自分の友達が悲しむのは嫌だなって思ったんです。じゃあ友達の友達まで、どれだけ救えるか、そう考えて僕は現在熊本の支援をしています。大切な人だけでいいから、守る術を知っとかないとダメなんだろうなって。だから地震に興味がなくても、被災地に興味がなくても、それだけは考えていてほしいですね。
― 神戸大学持続的災害支援プロジェクトKonti
今年5月に設立。主に神戸大学生を巻き込み、今までに6・7・9月と三回に渡り熊本へ派遣。現地では、家族向けのイベントの開催、被災家屋の片づけ、ごみの分別作業、現地農家の手伝いなど、様々な活動をしている。

ブログ→http://ameblo.jp/kontikobe/entry-12200989787.html
33. 楠木 洋
「希望新風」店長
49. うりぼーたろう
神大のマスコットキャラクター
75. 中村 嘉孝(なかむら よしたか)
神戸大学法学部4回
29. 吉田 覚
WIll Way代表
55. 宮下奨平
アプリ開発者