NO.56
奥野亜衣
(バレエダンサーを目指す、現役大学生)
「全力で向き合い、全力でぶつかって、全部自分の糧にする 」

夢への挑戦は挫折も困難もある。しかしその全てが必然のものだった。小さい頃からバレエに魅了され、バレリーナを志すまでに至った想いとは。
Presented by Aimi Fukuyama,   Kayou Arima
Photo by Haruna Kikuchi
私もバレリーナとして働きたい
― 外国でバレリーナになりたいと思ったきっかけについて教えてください。
バレエ教室の先輩がノルウェーでバレリーナとして働いているのを見て、外国ではバレリーナとして働くことができるんだってぼんやり思ってました。でもどうやったらバレリーナになれるのか分からなかったし、ただ漠然と留学すればバレリーナになれるんだと思ってました。だから留学する権利が得られるコンクールにいっぱい出たんですけどなかなか結果が出なくて。高校2年生の時に講習会があって、アメリカのバレエ学校の校長先生がレッスンを開かれたんです。そこで校長先生が目にとめて下さって、「君、アメリカに来ないか?」と誘っていただき、翌年の夏にアメリカへ短期バレエ留学をすることになりました。日本だとバレエを職業にしようと考えている人ばかりがバレエを習っているわけではありません。でもアメリカに行ってみると皆、本気でバレリーナになるためにレッスンしているんです。その意識の違いにまずショックを受けました。それに現地の同年代の生徒が集まるクラスで練習をしていたら、容姿…特に美しい脚のラインをアジア人である自分と比較してしまい、自分は全てが劣っている…とコンプレックスを感じて落ち込みました。でも、アダージオ(ゆっくりした動き)の中で、勢いをつけなくても高く上げてキープできる私の足を先生が褒めて下さったことをきっかけに、体の柔軟性が私のアイデンティティとなり、強みとなりました。私は生まれつき体が柔らかいのですが、外国人のダンサーも皆そうなんだと勝手に思い込んでいたんです。でも実際はそうではなかった。だから「この柔軟性は海外でも通用する!」と、私の踊りの個性として自信を持つことができるようになりました。それからアメリカではバレエ団にバレエ学校が附属しているので、バレエ団の舞台を見に行く機会が何回かあったんです。そこでプロのバレリーナを見て、私もバレリーナとして働きたいと改めて思いました。漠然とした想いがより具体的なものになったんです。
― どうして日本でバレリーナにならないんですか?
一番の理由は労働環境の面でしょうか。日本ではおそらく、ダンサーの仕事だけで生活していける人は、本当に少人数だと思います。バレエはヨーロッパ発祥なので、海外、特にヨーロッパでは芸術としてのバレエ発展の為に、国単位でしっかりとしたサポートがあります。しかし、残念ながら今の日本ではそういったサポートがありません。それに、ダンサーという職業の地位が日本では海外より確立されていないので、日本ではなく海外でダンサーとして働きたいと思いました。
― 就職活動の様子を教えてください。
ダンサーになるために中学あるいは高校卒業後、海外のバレエ学校へ留学し、そのまま就職活動をされる方が多いです。でも私の場合、バレエだけの世界ではなく、もっと視野を広げて考える人になるように…という両親の考えから、高3夏の短期留学後、当たり前のように大学受験のための勉強を始めました。バレエを続けるためにたくさんのお金が必要だったので、「バレエをしながら大学に進学するのなら国公立大学にしなさい」と言われていました。神戸大学発達科学部には身体表現で受験できる学科があったので、「そこしかない」という強い気持ちで受験しました。入学後、後期から休学してアメリカのバレエ学校に戻り1年間留学している間に現地で就職活動をしました。10回くらいオーディションを受けましたが、色々うまくいかず、去年の夏に一旦帰国しました。それから去年の2月までは大学の勉強に集中して2月末から就職活動を再開しました。本当はアメリカで就職活動をしたかったのですが、アメリカでは不景気で労働ビザが発行されにくくて、今季はヨーロッパやオセアニアの国に絞って就職活動をおこなっています。諦めずに頑張れているのは去年のオーディションで「君全然ダメだね」って最初から切り捨てられるんじゃなく、ちゃんと自分の踊りを見てもらえたからだと思います。そして、オーディションも最終選考まで残ることが多かったからだ思います。それにアメリカの校長先生に「あなたは綺麗だし、才能あるから辞めちゃだめだよ。絶対に。」と言っていただき、それも自信になりました。
バレエを嫌いになるんじゃなくて出来ない自分を嫌いになるんです
― 小さいころからバレエは好きだったんですか?
好きでしたね。バレエをしていると自分が輝けるからバレエが好きです。バレエしている時の自分って普段遊んでいたり、学校に行っている時の自分とは別世界の人間になれます。通っているバレエ教室には憧れの先輩がいて、その先輩みたいに踊れるようになりたくてバレエばっかりしていましたね。年を重ねるごとにますますバレエが好きになっていきました。普通に就職するというのが考えられなくて、バレエを仕事にしたいって思いだしましたね。
― バレエを嫌になることはないんですか?
ないんですよ(笑)やっぱり怒られることもあるし、スランプもある。運動能力が足りないから出来ないこともあるし。先生に凄く怒られてトイレで泣いたこともあったんですけど、バレエが嫌いになるんじゃなくて出来ない自分が嫌になるんです。自分のことが嫌いになって自分のことが嫌いな自分が嫌いだから練習して好きになれるようにする。人より早くスタジオに来て、いっぱい筋トレしてストレッチして、レッスンが終わった後も一人でずっと自主練。バレエがもっと楽しく出来るようになりたい。出来ない自分が嫌いだし悔しいからできるようになるまで帰らないみたいな。それだけバレエが好きでした。取りつかれたようにやっていました。
― 努力を重ねてきたんですね。
努力してるとは感じないんですよ。出来ない自分が嫌だからやってるみたいな。それが良かったんです。努力してると思ったらしんどくなるじゃないですか。例えば、毎日腹筋やるんですけど、毎日腹筋100回すると思うだけなら絶対続かないでしょ?でも、それをしないと踊れないし、楽しいことができないのはいや。だから、続けられるんです。なので自分が努力を重ねてると感じたことはないですね。
― バレエの魅力を教えてください。
まずは瞬間の芸術だということですね。ビデオで観るのと実際に観るのとではやっぱり違う。伝わってくるものが違うし、同じ舞台は二度とないんです。踊り手のコンディションにもよるし、二度と同じ動きはない。パートナーや劇場によっても変わるし。だから舞台を構成する全部の要素がうまい具合に作用しあって最高の瞬間が味わえた時はとても感動します。それがバレエの魅力ですね。それに、その最高の瞬間も人によって違うわけじゃないですか。観る人によって感じることは違いますし、正解がないのもまた魅力の1つですね。
― 将来どんなバレエダンサーになりたいですか?
大きな目標としては、深みのある踊りのできるダンサーになりたいです。今まで、そしてこれから積み重ねていく人生全てを踊りに活かしていきたいです。後、大人になって、がむしゃらに練習だけするのではなく、踊る前に挑戦する踊りの時代背景や役どころをしっかりと調べるようになったんです。どう踊ろうかを以前より細かくこだわって考えるようになりました。そうすると、足の出し方一つとっても、かなり踊りの印象が変わってくるんです。プロのダンサーになるとそのこだわりをより大切にしていかなければならないと思います。お客さまはバレエを観るためにチケットを買い、劇場に足を運んで下さっているので、ただこなすだけでなく、高いクオリティの踊りをお見せできるようになりたいですね。
― 神大生に最後ひとことメッセージをください。
すべては必然ということです。今やってることは失敗や挫折も含めて、後になってからでも必ず繫がってくる。だから今できることは全て全力で向き合い、全力でぶつかって、全部自分の糧にすることが、後々自分の夢の実現につながるのではないかと思います。私もこれからも夢に向かって頑張り続けようと思います。
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「薄井憲二バレエ・コレクション 2015 企画展 蘇る白鳥~『瀕死の白鳥』舞踏譜をめぐって~」に出演します。日時は、4月29日(水・祝)12:30/15:00 場所は兵庫県立美術文化センターです。
47. 羽賀 誠
ベルカン9期代表
18. 田中 優祐
起業家精神育成ゼミナール創始者
50. 池田 輝彦
りんぐ店長
30. 郡司 ペギオ 幸夫
理学部教授
22. 吉備 友理恵
関西建築サークル#代表