No.136

USJでみんなを元気にしたい

山本歩

(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン マーケティングコミュニケーション部 部長)

Presented by Nao Kondo

Photo by Haru Miura


ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下、USJ)のマーケティングコミュニケーション部部長の山本歩氏。USJの独自性を活かし、様々なニーズをくみ取りながら新たなコンテンツを発信し続ける。世界ナンバーワンを目指して成長を続けるUSJと山本氏の熱い想いとは。

PROFILE

山本歩

ディズニーは夢の国、USJは目覚めの国。

-これまでのブランドスローガンとUSJの歩みについて教えてください。


USJの方向性を決めるにあたって、やはり同じエンタメ業界のディズニーランドの存在は大きいです。USJは、オープン当初から関西では評価されていたのですが、関東の人たちは東京にあるものに一番の信頼を置いているので、USJはディズニーに比べてアトラクションの完成度や提供サービスといったクオリティが劣っていると思われていました。完成度やサービスのクオリティが低いと思われていたら「あの映画の世界が実現しました」といって新しいアトラクションを出しても響きません。そこでまずはクオリティを認めてもらうために「世界最高をおとどけしたい。」というブランドスローガンを設定し、クオリティのイメージの改善を徹底しました。全てのコミュニケーションにそのブランドスローガンをかかげ(テレビCMにおける最後の「Wow!」の部分です)、またアトラクションもサービスも世界レベルのクオリティに見合うよう徹底しました。様々な活動を行ったのですが、それが実際に実を結び始めたのが、ハリーポッターエリアをオープンした以降のことでした。ハリーポッターのオープンを機に関東からも多くのお客様に来ていただくようになり、その口コミもあって、まだ来たことのない人の間でもクオリティのイメージはポジティブなものになりました。こうなるとクオリティの改善の次の段階として、USJ“全体”としての「ディズニーとの違い」を強く売っていくことに重点を置き始めました。というのも、関東のお客様へのリサーチの中で「USJはハリーポッターやミニオンがあるのは知っているし、ディズニーくらべてクオリティは悪いわけではないんだろうけど、でも実際行くとなるとディズニーで十分だと思っている。わざわざ交通費と宿泊費を出してまで関西に行く理由がいまいちよくわからない。」という意見が多く聞かれたからでした。その人たちにとっては、一つ一つアトラクションの良さだけでは、わざわざ東京からくる理由には十分ではなく、USJ“全体”としてディズニーと何が違うのかということをしっかりと伝えていくことが必要なのです。そのためにUSJ全体の特長を表す「NO LIMIT!」という新スローガンを昨年から掲げました。

-USJ“全体”の特長についてはどのように考えていますか?


それを考えるときも、ディズニーがベンチマークとなります。ディズニーは夢の世界で、ゲストを包み込んでくれる優しくて癒される空間。その場にいるだけで安心できる世界観を構築しています。その一方でUSJは、ジュラシックパークやジョーズのようなハードなアクション映画を題材にしたものや、フライングダイナソーやハリウッドドリームザライドなどのジェットコースターで、どちらかというと刺激的なコンテンツ。パークの中のクルーも独自のやり方があって、自分たちがどんどんフランクに声をかけていって友達になり、その人のためだけに特別な対応をすることを目指しています。これは、アメリカ人の前社長の提言がはじまりでした。彼には行きつけのコーヒーショップがあったのですが、そこに毎日通っているにも関わらず、「今日は何になさいますか。」という言葉で始まり、いつも決まったサービスが行われていたそうです。アメリカだったら、もっと親密に、今日の天気とか服装とか、その人に合わせた話を積極的にして親密な関係をつくる。「日本人のサービスはホスピタリティに優れていると言われているがそれは違う。もっともっとその人のためだけに一個人として扱ってサービスしないとダメだ。」といつも言っていました。その考え方を取り入れて、今のゲストそれぞれに合わせて積極的に話しかけるスタイルが始まりました。このように、刺激的なアトラクションと、超積極的なお客様とのコミュニケーションがUSJとディズニーとの大きな違いだと思っています。また、別の観点では、ディズニーは完成された予定調和で安心できる世界。その反対に僕らはハチャメチャで非予定調和。ある意味未完成にすることで、ゲストの方が入ってこれる余地を作っている。熱烈なUSJファンの方からすると自分たちがUSJを育てている、みたいな感覚があるらしいです。USJはわざと未完成の部分を残すことでゲストは積極的に参加できて楽しむことができる。パレードのダンスとかでも、ゲストは見るだけでなく一緒に踊って参加することで完成するスタイルです。そういうUSJにしかできないことをもっと強く売っていきたいと思っています。

-USJの実現したい社会的価値について教えてください。


まだ、十分ではないかもしれませんが、ディズニーに比べてスリルを含む超刺激的なアトラクションと、ゲストの高い参加性によって、“明日に向かう元気”が提供することができれば、と考えています。人間ってただ癒され包まれたいときもあれば、積極的に自分の殻を破って元気になりたいときもあると思います。ディズニーが夢の国だとしたら、USJは目覚めの国。今は、時代的に日本は自信を失っているというか元気がないような気がします。ある調査のデータでは、世界各国と比較しても、自信を持てず将来に対して不安になっているようです。だからそんな日本をUSJらしく超刺激で元気づけられればと思い、日々精進しているところです。そういう意味では、USJは、まだ“羽化”の途中だと思います。僕たちは早く日本一、世界一のテーマパークになりたいと思っていますが、その目標を達成するために一番大事なのは、自分は何者なのかを踏まえて社会やお客様に何ができるかを分析することと、その分析から生まれた目標に対して強い情熱を持つことの両方だと思っています。分析だけではダメで、こうなりたいああなりたいというパッションが成長するためには必要です。みんなにも、自分自身のルーツを見つめ直して、自分に何ができるのか、何をしたいのかを大学生時代に考えて欲しいと思います。


山本真也

(国際文化学研究科准教授)

広く、かつ深く、物事に取り組む


藤谷 亮太

(無一文で日本一周を達成した男)

日本人は優しかったです。


LINO LEIA

(歌手活動を行う現役大学生)

音楽があれば必ず世界は変えられる。


西本 光希

()

バリア(障害)をバリュー(価値)とする。


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