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青春コンプを患う大学3回生のショートストーリー、冒頭2ページ

na


 

 

 

参考:WeeBlog , " 青春コンプレックスの一般的な症状と現役患者からの処方箋"

 

https://weebee1212.com/shintame/content.php?id=179&writer_id=68

 

画像:KooBee2020 “神戸紹介”/WeeBee “ミセナビ”

 


 

 

二人乗りをしている高校生を見ると羨むだけでは終わらず、「それ法的に違反だから!」と思ってしまう。

 

キョロキョロと周りを気にしながら手をつないで歩いている中学生カップルを見つけると、ずけずけ間を横切ってやりたくなる。

 

カルピスとシーブリーズのCMは基本ダメ。

 

 

 

青春コンプレックスを患って、早3年。

 

もう二度と戻ってこない時間への固執を、いまだにしぶとく続けている。

 

というか、治らない。

 

 

 

別に意気揚々と大学デビューしようとしていたわけではなかったけれど、

 

ここまでなにもないと、もう僕はこの先誰とも付き合わず、結婚もせず、孤独死する運命なんじゃなかろうかと、

 

ウン十年も先のことを不安がってしまう。

 

 

 

「青春」という言葉の意味も、「好き」という感情も、

 

いつしかわからなくなってしまった。

 

 

 

サークルの飲み会、

 

乾杯の音頭からだいたい40分後に

 

「最近、どう?」

 

の一言でゴングが鳴り開催される恋愛近況報告会に

 

最初はなんとかついていこうとドラマや映画から学んだ嘘や妄想を並べたりしていたけれど

 

 

いつしかそれもネタが尽きてしまって、

 

隣の「お酒は飲めないからその分元を取ろうとフードを頼みまくる卓」にしれっと移動して

 

机の端で後半戦をやり過ごす術を身に着けられるようになった。

 

 

 

 

彼女と出会ったのは、そのしれっと逃げた先のテーブルでだった。

 

 

ほぼ参加していないサークルの追い出しコンパの一次会で、

 

いつものように

 

「そういえば俺、彼女できました〜」

 

と、絶対に言うタイミングを今か今かと待ち構えていただろうちゃらけた先輩がふにゃふにゃと片手を上げたところから

 

各々の恋だの愛だのを披露する時間が始まって、

 

 

また始まったか、と移動した隣の卓で

 

やみつきキャベツのおかわりとジンジャーエールを注文する彼女の細い睫毛に、

 

なぜか見とれてしまったのだ。

 

 

 

 

視線を戻してもなお見続けている僕に

 

ん? と彼女が眉を上げたところでハッと我に返った。

 

 

「なんか頼みます?」

 

「いや、えーっと、あー、」

 

「はい、メニュー」

 

「あ、どうも、じゃあー、えっと、あ、僕もジンジャーエールで」

 

「ジンジャーハイじゃなくて?」

 

「あっ、じゃあジンジャーハイで、すみません、おねがいします」

 

 

突然の女子との会話。

 

そもそも普段から機会がなくて場数が少ない上に心の準備をしてないんだから

 

そのへんのイケメンみたいにうまく話せないことをどうか許してほしい。

 

 

おどおどしている僕を目の前の彼女は終始キョトンとしながら見ていて、

 

その視線がさらに僕をおどおどさせた。

 

 

 

注文が終わり顔の向きを正面に移すとまだ彼女は僕を不思議そうに見ていて、

 

「これ食べます?ちょっと頼みすぎちゃって」

 

と、3かけなくなっているチキン南蛮の皿をずずーっと僕の方へ移動させた。

 

 

 

「あ、じゃあー、もらおうかな」

 

皿の上に乗ってある箸はたぶん誰かが使ったやつで、新しいやつを探して机の上を見渡すと

 

はい、と彼女が割れてない割り箸を差し出してくれた。

 

 

 

「あ、どうも、あざす」

 

「他のも全然食べちゃってくださいね、なんかみんな移動しちゃって、私一人じゃ食べ切れないので」

 

 

へへっ、と、彼女は言葉の終わりに肩をすくめて微笑んだ。

 

 

 

 

 

あ、たぶんこの人と、付き合うことになるかもしれない

 

 

 

 

この瞬間、僕は本当に直感的に、そう思った。

 

 

 

 

何の根拠もない。

 

 

どんな性格だとか、どんなタイプが好きだとか、そもそも何歳なのかとか、

 

どんなYouTubeを見て、アーティストは誰が好きで、何を美味しいと思うのかとか、

 

 

なーんにも知らない。

 

 

 

少なくともジンジャーエールは好きで、飲み会でお酒を飲まなくても参加するくらいには余裕があって、

 

あと白のスウェットがとても似合うということだけを知っている状態で、

 

 

僕は彼女との未来を、自分の頭の中に思い描いてしまった。

 

 

 

 

これはある意味青春コンプの重症化なのかもしれない。

 

あまりに現実世界で何も起きていないがゆえに脳が錯覚を起こしているのかもしれなかったけれど、

 

 

その時僕は紛れもなく、彼女を人生の主要人物にキャスティングしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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