KooBee本誌に掲載できなかったインタビューの全貌をWeeBee特別公開!!
tofubeatsさんの貴重なお話を前編、中編、後編に分けてお届けします。
【中編】tofubeatsにとって音楽とは。今の自分の記録が未来をつくる。
PROFILE
tofubeats
-糸川:いろいろなアーティストの方とお仕事されていると思うのですが、その中でどのような刺激を受けてこられましたか。
tofubeats:芸能界や音楽業界の最前線で活躍している方って、やっぱり皆それぞれ違った強みを絶対持っていらっしゃるんですよね。小室哲哉さんや藤井隆さんとか、この人じゃないと替えがきかないような強みが絶対にあると思います。そういう強みを持っている人たちは、どなたとお会いしてもやっぱりこういう人が残っていくんだなと感じますね。本人がそれに気づいているかいないかもそれぞれで面白いですし、お会いするとびっくりしますね。
-糸川:そういったすごい人たちと会ったときに、その人に合わせて楽曲を考えられることもあるのでしょうか。
tofubeats:その人自身からオファーがくることもありますし、第三者からtofubeatsとこの人のコラボでやってみないかと提案してもらえることもあります。そういうときはもちろんその人に合わせて作りますが、僕がどういう風にいじくり回そうが、最終的にはその人の色になるというか、そういうスターにしかないパワーを感じることが多いですね。
-糸川:音楽を作る際、どのような人にどのような場面で聴いて欲しいと考えていますか。
tofubeats:これは正直どこで聴いてもらってもいいと思っています。ただ自分はやっぱりDJもしているので、いわゆるクラブみたいな音が大きいところで聞くと気持ちいい感じには作っています。かといって自分もイヤホンで音楽を聞きますし、どんな環境で聞いてもいいように意識していますね。
-糸川:曲ごとにそれぞれターゲットがいるわけではないのですか。
tofubeats:あるっちゃあるんですけど、どこで聞いてもいい感じになったりとか、どんなときに聞いても極力大丈夫なようにっていうのを意識しています。
-糸川:次に、歌詞を作る上で気をつけていることはありますか。
tofubeats:普段すごくお喋りなんですけど、曲の場合は言いたくないようなことを無理して言わないよう心がけています。基本的にメロディーを書いちゃったら、その全部に歌詞を乗せたくなって、つい言わなくていいようなことを言ってしまうときがあるんです。作った曲を活かすためになんでもいいから言葉を乗せたい、みたいな。そういうときにぽろっと出ちゃう言葉の面白さもあるんですけど、普段生きていても、いらないことを言ってしまって議論がシャープに進まないときがあると思います。そういうのが歌でも起こりがちなんですよね。そういった点を最近はすごく注意するようにしています。あと言葉選びについては、自分が10年後も歌っていて嫌じゃないかということをデビューの頃から気にしています。
-糸川:歌詞を書くときは、自分の感情を歌詞にすることが多いですか。
tofubeats:そうですね。結局歌詞は自分からしか出てこないので、日頃からメモを取るようにしています。メモを見返すとこんなこと書いたっけみたいなことが意外とたくさん残っているんですよね。そういう自分の中にある、普段から意識していること、たまにしか意識しないこと、無意識に思っていることを紐解いて考えることが多いです。それこそ僕がなぜか「ドーナッツ」で例えることがありまして。ドーナッツ食べたいなって思ってるときがあるとして、なんで自分は食べたいんだろうってよく考えていくと、それは単にパンっぽいものが食べたいからなのか、甘いものが食べたいからなのか、手に持てて便利だから食べたいのかとか、その奥にいろいろな要求があると思っています。それをどんどん紐解いていくと自分が本当に思っていることは何なのか分かってくるような気がします。そういうことをいつも考えて作業していますね。
-糸川:tofubeatsさんにとって音楽、もしくは音楽を作るとはどういうことなのでしょうか。
tofubeats:音楽が何かというのはちょっと難しいのですが、音楽を作ることはやっぱり自分探しみたいなことになっちゃうんですよね、ださい言葉ですが。
例えば絵だと自分が考えていることが絵という作品になるじゃないですか。それって5年経ってもその絵を見返すことができて、その作品は自分が作ったものではあるけれど、自分ではない。その絵を見ていると、ああ5年前の自分はこう思ってたんだ、こういう絵を描きたかったんだっていう発見があって、それがまた今の自分が描く絵に影響すると思うんです。自分自身を1回外に出して見つめ直すと自分のことがよく分かって、またそれが自分に影響する。自分自身がどんどん増えていって、分身みたいなのができていく面白さが究極にあって。それがすごく楽しいのでずっとやっています。
-糸川:上手くいかないなってことが重なると、好きで始めたとおっしゃていた音楽を嫌いになることはありませんか。
tofubeats:僕も仕事になったときはきっとそうなるだろうなと思ってたんですけど、意外とならないんですよね。音楽自体は変わらずずっと面白い。
嫌なことを紐解いていくと別に音楽が嫌いな訳じゃないんですよ。締切がいっぱい来ているから嫌とかって音楽がよいって話と関係ないですし、あとは権利のことで揉めるとか、ギャラが少ない、機材が壊れた、パソコンの調子がよくない、自分がいい曲書けないとか。音楽の好き嫌いは関係ないんですよね。だからそうやって考えていくと暗く思うことはないです。何でもそうですけど、仕事としての部分で困ってるみたいなことなんで。あとは僕とマネージャー(杉生さん)はもう10年以上一緒に仕事していて、2人の取り決めで2、3カ月間本当につまらないなって感じたら2人で会って会議するっていうのを昔から決めてるんです。でも1回もその会議は発動していないので、根っからつまんないってことは意外とないのかなって思いますね。
-糸川:上手くいかなかったときの行動の指針はありますか。またその際の息抜きの方法や対処法があれば教えてほしいです。
tofubeats:1番いいのは上手くいかなかったことを一旦忘れることです。結構ベタに気分転換なんですけど、上手くいかなかったことを忘れるためにする。忘れたらもう1回作業に戻るみたいな感じが1番ベストだと思っています。でもまあ上手くいかないときって大体締切が近いときなので、もう頑張るしかないんですけどね(笑)。自分の場合は、もうそのことを忘れるまで他の仕事をします。
-糸川:お話を聞いていて、tofubeatsさんはよく自分の考えのルーツを探られているように感じました。tofubeatsさん自身がかっこいいと思う音楽、音楽に限らず例えばファッションなどでも、いいな、かっこいいなと思うルーツはありますか。
tofubeats:好きな音楽に共通しているのは、自分の考え方を探しているみたいなことや自分はこう思ってるんだみたいなものが伝わることですかね。音楽を聞いていていいなって思うときをよく考えてみたら、生きていてよかったなって思っているのと近い感じなんです。皆さんもそうなんですけれども、有名であろうがなかろうが人はみんな違っているのに「違わないよ」って感じになっていて。大学にいると、そう感じることも多いんじゃないかな。でも本当に同じやつなんていない訳で、そういうのを音楽を聞いているとくっきりと感じるんですよね。身の回りに音楽作ってる友達も多かったので。やっぱり有名無名に関わらず、音楽を作っている人たちと話をすると皆違う考えを持っていることが分かる。しかもそれが音楽って形で並べられたとき、全く同じ曲を作る人なんて1人もいないので、人間って面白いなって思うんです。そういうことを感じたいっていつも思っていますね。中には、ひたすらスポーツ的にヒットチャートの上を狙おうみたいなプロアスリート的な考えの人もいて。それも1つの考え方なんですけど、その人の曲を聞いてるとその人の考えが伝わってくるアーティストや自分を伝えようとしている人が、僕は比較的好きですね。
-糸川:tofubeatsさんの音楽活動における最終的な理想はどのようなものですか。
tofubeats:音楽を記録のような感覚でずっとやっているんですよ。今までの記録を見返したときにいっぱい残っていたほうが面白いじゃないですか。だからできる限り続けられたらいいなと思っていて、最終的にこうなりたいと思って頑張っているというより、いっぱい記録が残ってたら面白いからできる限り残していこうみたいな感じですかね。
-糸川:遠い理想像があるというよりかは現在の自分の記録として残していきたいという感じなんですね。tofubeatsさんが今も変わらず純粋に音楽を楽しんでいるのが伝わります。
tofubeats:やっぱり人の音楽が好きなんです。ミュージシャンを見ていてもそういうことをひたむきにやっている人の方が最終的に特殊なものになれる気がしています。さっき言ったみたいに、自分は自分なんだって伝わってくるものが好き。逆に自分のそういうのを通じて、聴いてくれている人たちにも自分はかけがえのない人間なんだなって感じてもらえたらいいなと思っています。