「逆転就活」の就活孔明が帰ってきた!就活神大生の悩みを的確に言語化し、新たな切り口で答えを一緒に見つけてくれる「 Re:逆転就活 」。
第二回目の今回は、前回この連載への思いを書いてくださった中西亮さんが、学生のリアルな悩みに答えます。
今回の相談相手は、経営学部2回生女子のMさん。
彼女のお悩みは、 「自分の進む道が定まらないこと」 。公務員を志望しつつも、民間企業も気になる…。
就職活動の本格化を目前に、揺れ動く心に、就活孔明こと中西さんが、優しく鋭くアドバイス!
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中西さん:以下「中」
Mさん:以下「M」
業種を絞りすぎていて不安…
中:初めまして。中西亮と言います。今は、東京の出版社で働いています。今日は、よろしくお願いします。Mさんは、今、どんなことでお悩みなんですか?
M:ええと…。私は、公務員を志望していまして、地元で開催されている公務員セミナーにも何度か参加してみたのですが、いつも「民間企業のインターンにも行ってみたほうがいいよ」と言われます。でも、これといって行きたい企業がなくて悩んでいます…。 行きたい民間企業って、どうやって見つけたら良いのでしょうか 。
中:なるほど。Mさんは、 ご自身の進みたい道が定まらず、迷っている のですね。 一つ質問なのですが、どうして公務員になりたいと思うのですか。
M: 色んな分野に携われるイメージが公務員にはあるからです 。福祉から国際まで、多くの部門に関われるので、公務員の中でも行政を志望しています。
中:民間企業では、あまり多くの分野に関われないと?
M:そうですね。あくまで私のイメージですけど、民間企業は、転職しない限り大きく分野が変わることはないのかなと。一方で、公務員は3、4年単位で、部署やエリアが変わり、色々な環境で働けるのではないかと考えています。
中:ではたとえば、職場で良好な関係が築かれていても新しいところへ移りたい、と思いますか?
M:そうですね。むしろ良好であればその場を離れても関係は続くと思いますし。なにより私は飽き性なところがあるので、常に新しい環境に身を置きたいと思っています。
中:なるほど。Mさんは、 「変化」を好む性質 なのですね。
M:はい。そうだと思います。
中:ここまでお話を伺っていると、Mさんは「公務員になりたい」というよりも、「公務員になることで得られる変化」を求めているのかなと感じます。
M:確かにそうですね。
中:これは重要な点です。人が何かを欲しいと思ったり、なりたいと思うとき、表面的な部分に目が行きがちです。しかし、本当に欲しているのは、その奥にあるものであることが多い。
マーケティングでは、 「ドリルではなく、穴を売れ」 という格言があります。つまり、顧客が欲しいのは、ドリルという手段ではなく、穴という目的だということです。
M:つまり、公務員というのは、ドリルだと?
中:ご明察。Mさんが本質的に求めているものが変化だとすれば、それは公務員でも叶えられないかもしれないし、民間でも叶えられるかもしれないのです。たとえば、グローバルに事業を展開する企業であれば、公務員よりも変化に富む可能性は十分にあります。
M:たしかに。自分の深い部分の欲求に気付くことで、選択肢の幅は広がりますね。
中:その通りです。そこに気付ければ、自ずと興味を持てる企業とも出会えるのではないでしょうか。一例ですが、グローバルに事業展開をする大企業、あるいは、柔軟に事業を変化させるベンチャー企業も、興味の対象となり得るかもしれません。要するに、 まず自分の欲するところを見つめることが大切だ ということです。
M:なるほど。すごく腑に落ちました。
やりたい職業が見つからない
自分の本音の欲求を知ることで、企業選びの展望が見えたMさん。その上で、議論は、キャリアの考え方へと展開します。
中:さて、色々な仕事をしてみたいという、Mさんのお気持ちは非常によく分かりました。
とは言え、まずは何か特定の業種や職種に就くことになるわけです。「なんでも自由に選んでよいですよ」と言われたら、Mさんは何がしたいですか?
M :んー、特に嫌な分野はないので、本当になんでも良いと思っています。
中:なるほど。殊勝な心がけですね。でも、少し厳しいことを言うと、「なんでももいい」というのは、「何も考えていないのかな」と僕は感じました。もちろん、分かるんです。まだ働いたことも無ければ、企業のことも知らない状況で、「何がしたい」と問われることは、とても苦しいことです。
しかし、 主体的に人生を切り拓いていくためには、たとえ手探りでも、確信なんてなくても、今この瞬間の暫定解を出すことは大切 だと思うんです。
……おっと、いけない。つい熱くなってしまいました。
M:いえ。仰る通りだと思います。「なんでもいいです」と素直なふりして、考えること、決めることから逃げていたかもしれません。でも、やっぱり難しいです。どうやって、考えればよいのか、教えていただけますか。
中:喜んで! 「仕事」を考える上では、「業種」と「職種」に分けて考えるのが入り口 になります。
業種とは、 「誰に、何を提供しているか」 という事業全体の分類のこと。そう難しく考えることはありません。自動車、金融、メディア……。いわゆる、ビジネスの種類です。
一方で、「職種」という分類があります。これは、企業内での役割のことです。マーケティング、会計、人事など多岐にわたり、多くは「〇〇部門」という形で表現されます。
スポーツで喩えれば分かりやすいでしょう。野球、サッカー、テニスという種目が業種的分類であり、ピッチャー、キャッチャーというような、チーム内での役割が職種に相当します。ビジネスパーソンのキャリアは、この掛け算で表されます。例えば僕なら、「出版×営業」ということになります。
M:だんだんと、 「何を考えればいいのか」 が見えてきました!先ほど、なんでも良いと言いましたが、職種ならば、会計やマーケティングがしてみたいと思っています。
中:そうですか。Mさんは、業種に関して強いこだわりはないけれど、職種に対しては、希望の方向性がある。これは、もしかしたら、少数派かもしれませんね。僕の聴いた中では、業種より、職種について悩んでいる学生が多いように思います。「職種は問わないからアパレル業界で働きたい」という風に。Mさんは逆ですもんね。
M:言われてみれば、そうですね。私が道に迷っている理由の一つは、そこにあると今、気付きました。 新卒採用の多くが、「総合職採用(様々な職種に配属されうる雇用形態のこと)」なので、職種では選びにくい んですね。 すごく納得しました。
中:そうなんです。多くの日本の大企業の育成制度は、総合職で採用し、時間をかけて様々な職種を経験させるという風になっています。一方で、外資系企業では、入口の時点で職種を分けている場合もあります。あまり深入りはしませんが、一長一短です。今のトレンドとしては、「ジョブ型雇用」といって、どんどん外資系の人事制度に近づけていく流れがあります。
M:そうなんですね。
中:さて、今後Mさんが採り得るプランは2つあります。1つ目は、「業種に関しては考えない」という道。職種を重要視し、業種に関しては広く捉える。もう一つは、「とはいえ、もう少し業種について考える」という道。個人的には、こちらがオススメです。やっぱり、どんな価値を社会に提供しているのかは、働く上で重要だと僕は思っています。何がしたいかを素直に問うのが難しければ、「何はしたくないか」を考えてみるのも、有効な思考法だと思います。
M:消去法の視点で絞ってみるのもいいですね。もっと、業種についても考えてみます!
課題が明確になり、Mさんの目は輝きを増していました。次回の記事では、より具体的に業種の絞り方について検討します。
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次回の記事は・・・
・情報収集には2パターンある
・本命の会社を選ぶためには
中:業種を絞れていない理由はおそらく2つあると思っています。1つ目はそもそもどんな業種があるかを知らない。もう1つは、情報収集をしても、じゃあどの業種にするかを決める方法がわからない。この点に関して…
お楽しみに!