NO.66
土生健太郎
(放送委員会制作部)
「強引に自分の世界に連れ込む。それが僕の作品。」

全力で電車になりきる大会に挑む青年を描いたドラマ作品、『電車ごっこ選手権大会』を制作して全国NHK放送コンテスト優勝。そのシュールな世界観に思わず引きずり込まれてしまう。そんな”土生ワールド“の秘密とは。
Presented by Madoka Yoshihiro
Photo by Ririki Nakabayashi
『電車ごっこ選手権大会』とその”土生ワールド”
― 全国NHK放送コンテスト(以下、Nコン)で優勝した『電車ごっこ選手権大会』はどこから着想を得られたのですか?
着想は色々ありましたが、撮影する日に体育館を使えるということだったので何らかの競技がいいなって思ったんですよ。それから先は機材の関係で実現できることが絞られていったんです。あと、とりあえず変なものにしようという思いがあった。そうとなると、流れも全部決まった状態で頭の中に浮かんできたんです。
― 見所を教えてください。
もう「全部です」としかいいようがないですね。もし見所があるとすれば、見所がないところが出てきてしまう。だから全部に隙がないように作っています。『電車ごっこ選手権大会』は全部で6分なんですよ。それってすごく短くて、例えば普通の連ドラだったら、始まりから歌が入るまでの間くらいの時間しか無い。50分のドラマだと山と谷があってもいいかもしれないけど、こういう短いのを作っているときはずっと山じゃないと面白くないかなって。
― なぜNコンに作品を出そうと思われたのですか?
1回生の時は、Nコンに作品を出していませんでした。というのも、、高校生の時にNコンに作品を出したんですが、自分の納得のいかないまま後味悪く終わってしまって、それがトラウマになっていたからなんです。それなのに2回生の時に作品をNコンに出したのは、やっぱりもっとたくさんの人に見てもらえるステージが欲しいなって思ったから。賞状欲しさではないです。だいたい500人ぐらいの人が集まるNHKホールで映像を流すんですが、500人っていうのはなかなか学生主体で集められる人数じゃないです。そんな場所で、僕の作品を見て笑ってほしいなっていうのが最も大きな理由です。また、高校時代に可愛がっていた二個下の後輩の作品が全国NHKコンテストの4位までいったんですね。そのドラマの中でヒロインが言うセリフに「今が辛いなら変える努力をしないとダメだよ。もう一度頑張ってみない?」っていうセリフがあるんですよ。別に僕の事を思って書いたわけではないと思うんですけど、なんだかそれに後押しされて、やってみようかなって思えたのも理由のひとつです。
― どんな風に作品を作っていらっしゃるのですか?
話の作り方を一本の木に例えます。木には幹があって枝があって実がありますよね。例えば「友達は大事」といった伝えたいメッセージを「幹」、話の流れを「枝」、作品を「実」だとします。ドラマを作るとき、普通は「幹」と「枝」を作ってから「実」を作るんですけど、僕は「実」、すなわち作品のクライマックスとか設定から作っているんですよね。「幹」や「枝」から書くと、「こういう展開にならないといけない」っていう筋に沿って話を作るしかないんですね。そうすると「実」は味っけがないものになって、話が予定調和に見えて面白くないし、批判的な見方をすれば浅い。
逆に「実」から作ると、「こういう世界を表現したい」、「じゃあこの登場人物はどう考えて行動するんだろう」とか、「他の登場人物はどういう考えがあってどうするんだろう」っていう設定をワンシーンから作っていって繋げていくことができる。「枝」である話の筋はその入れ物として自然と出来上がる。こうしてできた「実」は、「木」すなわち完成品として見た時に「なんなんこれめっちゃ面白かった!」っていう反応が得やすいんです。とにかく観客が飽きず、来てよかったって思えるような面白いものを作りたいと思っています。だから僕は「実」から話を作っているんです。
― 「実から作る」とはとても面白い発想ですね。収集がつかなくなることはないですか?
実は、そこをどう収めるのか、どういう話なら一番しっくりするのかを考えるのが腕の見せ所で。そこが下手くそだったら全然面白くないものになってしまうというリスクはありますが、「枝」からテーマを作ってる人には考えられないやり方ができる。「枝」から作る方がリスクは少ないけど、発想が飛ばず面白くない。『電車ごっこ選手権大会』は「よし、電車でバトルしてやろう」っていう意味不明な発想から出来ているから面白いんだと思います。あまり作り込みが上手くなくて話が飛躍しすぎると通じないことがあるので、上手く着地させる必要はありますね。難しいですが、そうしないとやっぱり面白くない。

『電車ごっこ選手権大会』
https://t.co/7NyK9fjN7M
”土生ワールド”その始まりとこれから
― 映像を撮ろうと思ったのはいつ頃ですか?
高校の学祭で4分間のステージパフォーマンスの脚本と演出を担当したんです。
すっごいくだらない寸劇をやったんですが、それが馬鹿みたいにウケて。全校生徒900人がわって湧いたときに「すごいおもしれえ!」って思ったんですよ。それでお話を作って人に見せたいって思ったのが原点ですね。その時一緒にステージを作った人が高校の当時の放送部の部長をしていたんです。その人から1年生の終わりに放送部の助っ人として呼ばれたのがきっかけになって2年の春から放送部に入部しました。だから、高校生の頃から放送をガッツリやっていたというわけではないです。最初は脚本だけをやっていました。でも、自分が思っている画を撮るにはどうすればいいだろうって考えると、ものすごくうまいカメラマンがいない限りは自分でやった方が思い通りのものができるって思って。それでカメラに手を伸ばして、編集にも手を伸ばして、最終的に全部自分でやるようになりました。そうやって自分の世界観を作り上げてきましたね。
― いつも撮っているのはドラマなんですか?
ほぼドラマですね。色々理由はあるんですが、自分の想像した世界で笑ってもらうのが好きで、それを一番表現できるのがドラマなんです。例えばドキュメンタリーにすると、誰を取材するかといった取材対象が大事。バラエティーなら、企画の面白さと出演者のキャラクター性が大事。これらあに対して、ドラマなら100%自分の世界を作れる。また、ラジオドラマじゃないのは、映像の方が情報量が多くて面白くできるから。今回の「電車ごっこ選手権」でいうとCGちょっと使ってみたりといったように、編集の仕方で遊んでみたりだとかね。
― CGなどの映像制作技術はどのように身に着けられたのですか?
何回かやってみてただ慣れていくようにしました。「○○がやりたい」ってなったらWebで検索したりして、「こうやればいいんだ」って学んでいっていますね。本を読んでもいいんですが、ずっと触っているほうが速く身につく。やっぱり触らないと上手くなれないです。
― 憧れの人や目標の人はいますか?
『ハッピーフライト』や『ウォーターボーイズ』の矢口史靖監督。間に挟む小ネタなど、細かい演出が面白いんですよね。リアルな描写がうまい。僕も自分の作り上げた世界のリアルを書くことが多いですね。『電車ごっこ選手権』も、あの世界の中では「電車ごっこ」はきっとメジャーなスポーツなんです。高校野球と一緒で、電車を目指す男子高校生が校庭で一生懸命シュッポシュッポやっている世界。それがその世界でのリアルなんですよ。これからもそういう作品を作っていきたいですね。
― 次回はどんな作品を作られるんですか?
まだ構想中ですが、4月の作品上映会では新作を発表するのでぜひ見に来てほしいです。

【お知らせ】
神戸大学放送委員会第41回作品上映会「平面的コミュニケーション」

日時:4/19~21
17:00開場17:30開演
場所:出光佐三記念六甲台講堂
https://youtu.be/Z-2sp8dn2bI
33. 楠木 洋
「希望新風」店長
55. 宮下奨平
アプリ開発者
29. 吉田 覚
WIll Way代表
63. 尾内 純
古本とジャズ『口笛文庫』 店主
78. 野村 奈央(のむら なお)
知るカフェ神戸大学前店店長 / 発達科学部2回生