シンタメ

音楽を解析する

こくまろす





私は音楽が好きだ。特に、クラシック的な音楽にある単純に旋律や和音でその雰囲気を感じとれるものに興味をひかれる。

ただ、人間が耳で感じられるただの音の集まりであるはずの音楽がなぜここまで人を魅了し、心を揺らすことができるのだろうか。せっかく私は大学で物理学の勉強をしているのだから、その理由をまとめてみようと思った。


物理学的には音はただの波動である。その音波は縦波(進行方向と同じ向きに進む波)の空気の振動であり、周波数が音の高さ、振幅が音の大きさを表している。周波数は1秒間に振動する回数で、Hz(ヘルツ)を用いて表す。弦楽器は弦の振動、管楽器は気柱内の空気の振動を発生させ、音楽を生み出す。



和音について


和音(またはコード)とは、複数の音が同時に鳴って生じる独特の響きのことである。この和音が、音楽において人間に印象を与える大きな要因である。

国際標準化機構ではラの音を440Hzと定義し、その基準のラから1オクターブ上がると周波数は2倍に、下がると半分になる。

基準のラの音と、1オクターブ上のラを鳴らすことを考えてみる。このような音の組み合わせをオクターブユニゾンと呼び、厚みのある響きを生む。この時の周波数は

440:880

=1:2であり、非常に簡潔な組み合わせといえる。

また、3つの音の組み合わせの場合、たとえば、ファとラとドの組み合わせであるFメジャーという和音を考えてみる。それぞれの音の周波数は

349:440:523

≒4:5:6

と簡単な整数比に近い。ここで、周波数は1オクターブを均等に12分して考える平均律を用いた。

和音の種類は無数に存在している。

加えて、和音は同時に鳴らしたときだけではなく、一音ずつわけて鳴らしたときも和音特有の響きは継続されるようだ。これを分散和音(またはアルペジオ)という。

どうやら、複数の音の周波数が簡単な整数比に近いとき、その音の組み合わせ、すなわち和音は心地よく感じるらしい。ただ、簡単な整数で表せるからなんだというのか。たしかに、それによって音波が重なる頻度が大きくなるけれど、それはこの音の組み合わせだとこんな印象という風になる説明になっていない。

さらに、減三和音という和音ではそれぞれの音の周波数が簡単な整数比では表せないような音の組み合わせでは、安定した和音とは異なり不安や解決を求める響きになるようだ。

それぞれの和音の音の構成は決まっており、なぜその組み合わせでそのような特徴の印象を与えるのかを理論的に説明するのは難しく、「このような音の組み合わせではこんなイメージ!」といった統計的なものなのかもしれない。平均律では周波数の比が完全に整数比というわけではないし、分散和音にいたっては、同時に鳴らしてもない。そういった少し曖昧さを含んでいる点も、人間の心理的な傾向を汲み取って生まれたものであると考えられそうだ。それらを感覚的に理解していた音楽家たちがそれらを用いて感情を伝えるような音楽を構成してきたのだろう。

なんとなく音楽が好きで勉強しようと思い至るも、そのむずかしさから多くの挫折者を生む音楽理論。これはもしかすると、言語の文法と同じように、古来より感覚で発展してきた音楽を後付けで理論立てて説明したものなのかもしれない(文法なんて習わなくてもある程度日本語は話せたもんね!)。



倍音について


まったく同じ音でも楽器によって全然印象が違うのはなぜなのか。まったく同じ音なら、その音波は同じ周波数で同じ波形になるはずだろう。この疑問は私が高校で波動を勉強してからずっと思っていたものだ。

これは、主に倍音とやらが関係しているらしい。倍音というのは私は吹奏楽部の仲間がチューニングのときに多用していたせいか、あまりいい印象はない。安心のコトバンクで倍音の意味を調べてみた。

「振動数の最も少ない基音に対して、その整数倍の振動数をもつ部分音」

・・・意味不明である。

簡単にいうと倍音とは、ある音を鳴らしたときにその音とは別に自然と発生する音のことである。例えばピアノのドを鳴らしたとき、そのド以外の仲間の音もわずかになっているのである。信じられないかもしれないが、私も信じられなかった。意識するとその音も聞こえてくる(らしい)。

ピアノの音の周波数の波形は正弦波ではない複雑な形をしており、そのそれぞれの倍音たちが重なり合ってできている。




※正弦波とは、上に示した図のような最も基本的な形の波のことである。三角関数のsinを用いた関数であるので、その形はサインカーブなどといった名前でも呼ばれる。(高校になって急に出てきて数知れない数学嫌いを生み出したアイツだ!)

楽器の音の周波数の波形をフーリエ変換という手法を用いると、それぞれの倍音の正弦波の重ね合わせとなっていることが確認できる。同じ音でも楽器によって音色が違うのは、この倍音の構成が異なり、結果として波形が違っているからである。同じ楽器の音でも、倍音を多く含む音を「豊かな音色」と表現するのである。

この倍音が関係する奏法は多く存在する。弦楽器や木管楽器におけるフラジオという奏法は、特定の倍音を強調させて正規の指遣いでは鳴らせない音を鳴らすものであったり、金管楽器のリップスラーなんかも唇を柔軟に動かすことで同じ指で多くの音を出すことができるというものだ。



まとめ


正直に言うと、私は音楽も物理も、好きなだけで特別専門的な知識を有しているわけではない。ただ、こうして学校のお勉強が好きなものと結びついているとすごく不思議な気分になる。物理や数学は進むにつれて、より煩雑で勉強する意味もよくわからなくなってくるが、学んだものを通して好きなものを見てみると、また違った世界に見える。こういう瞬間があると、勉強も案外悪くないなと思えてくるかもしれない。



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