NO.85
近藤 友祐, 阿部 智明
(学生団体POMB)
「数学の面白さを伝えたい」

自主ゼミ班とWeb・イベント班からなる学生団体POMB(ポム)。学生同士が集まって授業外で進んで数学を自主的に学び、その面白さをわかりやすく伝えているそうだ。そこに秘められた熱意と「数学」への愛情とは。
(左:阿部 智明さん(Webエンジニア) 右:近藤 友祐さん(代表))
Presented by Yuuma Taketa, Madika Yoshihiro
Photo by Ririki Nakabayashi
数学の世界に足を踏み入れてもらうために
― まず、学生団体POMB(ポム)さんはどういう団体なのでしょうか?
〈近藤 以下、近〉私たちPOMBは、自主ゼミ班とWeb・イベント班という2つの班に分かれて活動しています。 自主ゼミ班は、学生だけでゼミを運営しています。毎週1人ずつ順番で、本を約10ページ読み進み、理解したことを発表します。半年から1年かけて1冊の本をじっくりみんなで学んでいて、週に1回、2時間程度開催しています。また、自主ゼミ班の中でも群論や超準解析など複数のグループに分かれて、それぞれの専門分野について学んでいます。 数学のゼミは真剣勝負なんです。論理に矛盾や不十分な点が存在すると、ビシバシ指摘が飛んできます。そこに上級生下級生といった隔たりはなくて、全員でまっすぐに取り組んでいます。 しかし、学生だけでやっているゼミなので、全員のやる気が持続しないと破綻してしまうこともあります。学生だけでゼミを回すのは大変です。

〈阿部 以下、阿〉Web・イベント班は年に数回、中高生向けに「Mathカフェ」というものを開いています。「Mathカフェ」とは、中高生が気軽に楽しく数学の面白さに触れられるように企画しているイベントです。これまでは講義形式で行っていたのですが、先日の六甲祭では「素数大富豪」というものを行い、来てくださる人が主体的に関わることのできる「参加型」のイベントを作るようにしています。中高生にも受け入れてもらいやすいように、式をほとんど使わずできるだけ図や絵で説明すること、できるだけ途中式などは取り払ってまずは結論だけを伝えることを意識しています。とりあえずは「数学でこんなことができる!」ということを楽しんでもらえればなぁと。そうすればその過程を学びたいと思ってくれると私たちは期待しています。
― やはり理学部の数学科の方が多いですか?
〈近〉そうでもありません。サークル結成当初は発達科学部の方たちがほとんどでしたし、僕の同期は工学部、後輩の代は理学部物理学科の学生が多いです。
数学は多くの人に開かれたものであってほしいと思っています。音楽が音楽学校だけのものではなく、文学が文学部だけのものではないように、数学も数学科だけのものではない、と言ってもよいのではないでしょうか。
― なるほど!まさに「Mathカフェ」は「数学が多くの人に開かれたものであってほしい」という思いが詰まったコンテンツですね。その他に対外に向けての活動はされていますか?
〈近〉最近は自主ゼミの成果報告会を周囲へ公開しました。 あくまで僕の感覚なのですが、実際の数学の営みと世間一般における数学のイメージは、あまりにも乖離しているように感じるんです。
みなさんは「数学」と聞いてどう感じますか?おそらく受験のために勉強した数学を思い出して、大量の計算練習やテクニカルな難問に取り組む教科、というイメージを強く持っているのではないでしょうか。それは数学のほんの一面でしかないのに、このようなイメージを持たれてしまうのが僕はもどかしくて、どうにかしたいと思うんです。
「教科としての数学」と実際の数学の営みは趣が異なります。例えば、授業で学ぶ音楽と、皆さんが普段楽しんでいる音楽って違いますよね。音楽の授業ではクラシックを聴いて感想を書いたりリコーダーを吹いたりしますが、ほんとうの音楽の世界はもっと幅広く奥深く、豊かな世界です。似たようなことが数学にも当てはまることを僕はもっと知ってもらいたい。授業の数学だけでは見えてこない、広い数学の世界があります。
ぜひこの世界に歩みいれてほしいんです。数学書を開いてみると、高校時代までの計算ばかりの数学とはまるでスタイルが異なることに気づかされます。「定義→定理→証明→…」の羅列に最初は戸惑うかもしれませんが、一歩一歩着実に踏みしめていけば、これまで見えなかったものが見えてくるようになります。
学んでいることを伝えてほしい
― 確かに数学に対して偏見を持っていました。
〈近〉よく、「文系だから数学を理解できない」ということを耳にしますが、僕はそういうことではないと思います。理系でも文学作品や歴史に詳しい方がいて、同様に文系でも数学やプログラミングを楽しんでいる人がいます。そもそも文理の区分は良くないものだと思いますが、その区分を認めるにしても、数学は決して理系だけのものではないと思います。
それに、数式や記号の難しさのせいで数学が嫌われることもありますよね。数式は音楽で言う楽譜のような、全世界共通の便利な記法・言葉です。良くも悪くもたくさんのことを凝縮して表していますから、立ち止まってゆっくり考えれば、その意味は分かります。逆に、数式を「謎の神秘的なベールに覆われたもの」だと崇め奉るのも間違いです。中身を理解せずに美しさだけを強調するのは真摯さに欠けます。

〈阿〉数学の世界を探検するために基礎的な数学の知識を地道に学ぶことが不可欠なのは事実です。しかし、教科としての数学を学ぶ高校生に、その時点で数学への興味を失ってほしくない。それはとてももったいないことなので、高校生たちにまずは実践的な数学や楽しい数学を体感してもらって、数学に興味を持ってもらえたらいいなと思っています。そのために「Mathカフェ」を開いています。
― 今、何を学んでいるか教えてください。
〈近〉わかりやすくお伝えするために、ふわっとお話しします。私の所属する数理論理学班では、『論理や数学というものを「数学的に」分析する』ことをしていて、今は特に「様相論理」と呼ばれる、「必然性」「可能性」を形式的に扱える論理を勉強しています。また、数理論理学で培われた手法を用いて、無限大の演算に関するある種の命題が「証明も反証もできないこと」を「証明」することにも興味があります(連続体仮説の独立性といいます)。他のメンバーも魅力的な勉強をしているので、ぜひ当団体のウェブページをご覧ください(笑)。
― 神大生にひとことお願いします。
〈近〉現在、みなさん何かしらの勉強をされていると思います。自分の学部の勉強や、サークル、部活、もしかしたらアルバイトでも何かを学ぼうとしてるかもしれません。そこで皆さんには、学んだことを周りに伝えてほしいと思います。自分の学んだことを誰かに認めてもらえることは嬉しいし、誰かに興味をもってもらえればもっと頑張れるような気がします。自分は数学に関心があってやっていますけど、同じように何かを学んでいる人の話をぜひ聞かせていただきたいと思います。
― 編集後記
インタビュー後に数学にまつわるおもしろいお話をしていただきました。恥ずかしながら「文系」だから数学は理解しにくいだろう、と思っていた私でも理解でき、楽しめるものでした。学問は深めてこそ。偏見を取っ払って、純粋に学ぶ姿勢次第で学問は楽しいものに変わる。目を輝かせながら熱く数学を語る彼らの姿を見て、大学に入った頃の新しい学問との出会いに胸をときめかせていた自分を思い出しました。

 学生団体POMB公式ウェブページ
21. 鈴木 麻里絵
thREAD代表
89. 矢野隆之, 徳永滋之
アウトスタンズ代表・副代表
7. 堀川 恭加
女子ラクロス部キャプテン
27. 吉原 史郎
経営学部卒コンサルタント
78. 野村 奈央(のむら なお)
知るカフェ神戸大学前店店長 / 発達科学部2回生