NO.104
山下陽子
(神戸大学大学院農学研究科特命助教)
「食や健康の研究って、奥が深くて面白い。」

食や健康の研究だけでなく、食の大切さを伝える活動も積極的に行っている山下先生。だから先生の説明は分かりやすいし、わくわくしながら聞ける。彼女の研究の原動力や、神大生に伝えたいメッセージとは。
Presented by Rina Fujimoto, Honoka Kuwahara
Photo by Wako Nagasaka
若いみんなにだからこそ「食」の大切さを知ってほしい。
― まずは先生の自己紹介をお願いします。
大学院の農学研究科・生命機能科学専攻で研究をしています。もともと食・栄養・健康に興味があり、大学で勉強してからいったん助手として勤めました。でも大学で働いていると、新しい情報を得たり自らの科学的知見を明らかにしたりできることに魅力を感じ、学位を取って教員を目指し、ここの研究室に来ました。ずっと学べる環境にあるっていうのが素敵だと思ったんです。
ここの研究室では食料の生産の研究ではなくて、食品に含まれるいろんな成分が体の中でどう作用し、身体の中で健康にどう役立っているのかを研究しています。またいろんなところで研究を知ってもらい、実際にどういう食べ方をするのが大事なのかを伝える活動をしています。
― そうなんですね!今は具体的にどういった研究をされているのですか?
私がずっと研究しているのは、ポリフェノールと健康についてです。特に、チョコレートのカカオや黒豆に含まれるポリフェノールが専門です。ポリフェノールは健康と深い関わりがあって、肥満や高血糖の抑制をしてくれるんですけど、生活習慣病の予防改善への応用を目指して研究しています。
ポリフェノールって植物が自分で作る免疫物質なんです。植物は私たちみたいに移動することはできないし、紫外線は植物にとっても有害なのですが、私たちよりも格段に多い紫外線を浴びても生き続けることができる。その理由の一つはポリフェノール等の免疫物質を全ての植物が持っているからです。ポリフェノールはそういった免疫物質のグループの総称で、たくさんの種類があるんです。カテキンもその一種なんですよ。 私は研究してきたカカオや黒豆のポリフェノールは分子量が大きくて、体内にほとんど吸収されないので、これまで摂取する意味がないと思われていました。しかし体にとっていい効果が一部あるっていう内容の文献がちらほら出てきていて。私たちは、消化管で何か作用発揮しているのではないか、あるいは分解されて吸収され、効果を発揮するのではないか、また分解されるなら、どういう構造でどこに吸収されるんだろう、っていうことに興味を持ち研究しています。
― では、どうしてそのような研究をしようと思ったのですか?
ポリフェノールの研究のきっかけはずっと前に、当時の先生が「やってみない?」って声をかけてくださったことですね。そもそも食や健康の研究がしたいと思ったのは、「食」は生きている間ずっと関わることで、ちょっとした違いが健康面に大きな影響を与える奥が深いものだと感じたからです。基本的に1日3回の食事をずっと続ける中で健康でいられる人もいれば病気になる人もいるし、食によって回復することもできる。それってすごく面白いなあと思ったのがきっかけですね。
― 今、白鶴酒造さんと「酒×スイーツのInstagramキャンペーン」でコラボされていますよね。
はい。去年白鶴酒造さんで食文化の継承とお酒を掛け合わせて食や日本の文化を学ぶイベントに、講師として参加させてもらったんです。そのときに講演とお漬物を作るワークショップをしたんですが、このイベントが幸いにも好評で今年もなにかしようという話を頂いて。今年のテーマは「二日酔い予防」。私たちの研究室では、アルコールなどの薬物代謝に効果的な食品成分の研究も実施しています。なので二日酔いしにくいと期待される成分を多く含む食材を使ってアテと一緒に飲むという内容にしようかと企画しました。また、このアテをスイーツとの組み合わせにしたら面白いんじゃないかとなって「アップル×シナモン」や「アーモンド×チョコレート」など二日酔い予防が期待できるプロシアニジンというポリフェノールを多く含む食材とお酒と組み合わせ、科学的な内容の解説も含めてコメントしているんです。本当は、わさび(に含まれるイソチオシアネート)やウコンがアルコール代謝にいいっていう研究もしているんです。でもスイーツにわさびやウコンは入っていないし、スイーツにわさびを塗るのはナンセンスだし、わさび風味のせんべいはイメージと違うなあ、となって挙げたのがこの四つでした(笑)。
― そうだったんですね。食材と飲む以外に、二日酔いにならない方法はありますか?
学生さんって、一人暮らしをしている人が多いですよね。私がずっとおすすめしているのはご飯と味噌汁。体調を整えるための、日本が誇る絶品の組み合わせだと思います。たくさんの栄養を摂ることができるし、味噌汁って使った野菜の葉や皮の部分、なんでも入れられるんです。準備するのも大変なんだけどと思いがちですが、とっても簡単。とりあえず味噌汁だけは自分で作って、具だくさんにして食べるといいと思います。
授業をした際などのレポートを見ていると「食生活が乱れがちになってます。」というようなコメントが多かったりそもそも食に関心をもってない人が多かったりするんだなあって感じます。でも大学生は大事な時期ですし、女性だともうすぐお母さんになるかもしれない年だからこそもっと食を大事にしてほしいなと思うんです。
楽しくってわくわくすることを見つけて、その中から自分のオリジナルを作り出す。
― では先生は学生と接する機会が多いと思いますが、学生の食生活に向けてアドバイスはありますか?
学生さんって一人暮らしをしている人が多いですよね。私がずっとおすすめしているのはご飯と味噌汁。味噌汁って使った野菜の葉や皮の部分、なんでも入れられるんです。準備するのも大変なんだけどとりあえず味噌汁だけは自分で作って、具だくさんにして食べるといいと思います。
この前教養の授業をしたんですけど、レポートを見ていると「食生活が乱れがちになってます。」というようなコメントが多かったりそもそも食に関心をもってない人が多かったりするんだなあって感じました。でも大学生は大事な時期だと思うし、女性だともうすぐお母さんになるかもしれない年だからこそもっと食を大事にしてほしいなと思うんです。
― ありがとうございます!では、先生がこれから研究していきたいことを教えていただけますか?
人間の体の仕組みは多くの人が長い年月をかけて研究してるのに、まだまだ分からないことだらけなんです。だからまずは、体内で起こっている現象をどんどん明らかにしていきたいと考えています。また食べることは生命にすごく大きな影響をもたらしているということをもっと詳しく明らかにして、人々の健康に貢献し続けたい。そのために質の高い研究をやっていきたいと思いますし、それを社会に還元できるようにしたいですね。
もう一つは、今時代はどんどん変わってきていてコンピューターが賢くなっていたり、便利な技術が広がっていていろんなツールができていたりしますよね。そういったツールと研究を組み合わせれば、一人暮らしの人や高齢者の方など、困っているたくさんの人たちが食や健康についての情報を得て、生活の中に応用できる。そんなシステムを開発できたらいいなと思っています。でも自分たちだけではとてもできることではないですし、世に情報を発信することはできても、研究室はツールを作る場ではありません。ただ近い時代、こういった食や健康に関するツールはたくさん出てくると思うので携われたらいいなあ、私たちの研究成果をたくさんの人に応用してもらえればいいなあと考えています。
― 先生のその原動力はなんですか?
とにかく今やっている研究分野に興味があるということです。研究が楽しい!もちろん忙しい時や大変なこともありますが、研究しているとわくわくするんです。これはどうなるんだろうって学生さんとディスカッションしてるだけでも楽しいし、実験をしている時も、じゃあ体のなかはこういう風になってるのかもしれないって考えることがやっぱり楽しい。これが私の原動力だと思います。
― 最後に神大生になにか一言お願いします!
やっぱり若い学生の若いうちにいろんなことに挑戦してほしいし、わくわくすることを見つけてほしいです。それは将来、自分の仕事に繋がるかどうかは関係なくて、わくわくするものと出会って、年月をかけて自分のオリジナルを作り上げていく。そのきっかけとなるようなものにたくさん触れて、大学生活を充実させて楽しんでもらえたらいいなと思います。
66. 土生健太郎
放送委員会制作部
49. うりぼーたろう
神大のマスコットキャラクター
28. 遠藤 龍
WARLD LOG所属
78. 野村 奈央(のむら なお)
知るカフェ神戸大学前店店長 / 発達科学部2回生
15. 長ヶ原 誠
発達科学部准教授